第15話 奴隷

2020年12月20日

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 ペペロンはBBCのアジトを潰すと決めた。そして、外に出る。

(ん? 何か皆集まってるな? 何でだ?)

 なぜか全ての配下達が、屋敷の前に集合していた。

(何か良く分からないけど、ちょうどいいや)

 そして、

「皆、聞け! 今から我がグロリアセプテムは、BBCのアジトへと攻め入る! 戦の準備をするのだ!」

 そう声を張って宣言した。ペペロンはその後、でっち上げた戦う理由を説明しようとするが、

「ペペロン様……」

 ルーシーが涙を浮かべて感動したようすでペペロンを見つめる。
 ペペロンは困惑する。

(なんだ?)

 良く見ると、ルーシー以外も感動したような表情をしている。

「ペペロン様、聞いていらしたのですか?」

 ララがペペロンにそう尋ねた。

 ――な、何を? 

 ペペロンはそう聞こうとしたが、何やら聞いてはいけないような雰囲気を感じ口をつむぐ。

「愚問でしたね……ペペロン様は聞いた上で、おっしゃっているのです。やはりペペロン様は我々の救世主……」

(何、言ってんだ? 税率下げたいから戦おうとしてるんだけど、救世主?)

「BBCに攫われたリーチェを救出するのです! さあ、皆さん! ペペロン様のいうとおり戦の準備を始めなさい!」

「「「おおおおおお!」」」

(攫われた!? リーチェ!?)

 ペペロンはしばらく事態を飲み込めず混乱する。
 そして、ララのセリフから、何とかどういうことなのか推測する。

(リーチェってのは確か元村長のルーシーの妹だったな。よく俺に話しかけてくる人懐っこいエルフだったから覚えているが……そのリーチェがBBCに攫われたのか。それで、助けてくれと俺に頼み込もうとしたら、俺が先にBBCに攻め込むと宣言した。そんなところか)
 
 考えてみて、特に状況的には問題ないということに気付く。

(むしろ、説明する手間が省けたし、部下達からの好感度も上がったっぽいし、いいことだらけだ。これは結構運が良かったのかもしれない)

 ペペロンはそう思い、

「では戦いの作戦を立てる! ララ、ポチ、ガス、ファナシア、ノーボ、エリー。屋敷に入るのだ」

 部下達とさっそく、BBCのアジトを攻める作戦を立てることた。

 ○

 アレファザレイド帝国スパウデン領にあるブラック・ブラック・カンパニーのアジト。
 巨大なアジトで、地下に作られている。元々は古代の遺跡だった場所を改造した場所だ。
 入り口は複数個所あり、どこもわかりにくい場所である。深い森の中だとか。滝の裏側だとか。墓に見せかけて入り口があるとか。とにかくいろいろ入り口が存在する。

 その日は、大昔に放棄された廃屋の床下に隠してる入り口から、BBCのアジトへ大きな袋が5個ほど運び込まれた。
 その袋の中には、それぞれ違法に捕らえられた奴隷が入っていた。皆、気を失わされており、袋は動いていない。

 奴隷達は袋に入れられたまま運び込まれて、アジトの奥深くにある牢屋に運び込まれた。

 運びこまれてしばらく経過する。

「う……」

 運びこまれた奴隷の1人リーチェが目を覚ました。

「ここは……?」

 リーチェは起き上がり周りを確認する。
 薄暗い牢の中。何処だかまったく分からない。
 リーチェはぼんやりした頭で、自分に何があったかを思い出し始める。

(そういえば……そうかBBCに!)

 彼女は自分がBBCに連れ去られてしまったということを思い出した。

「よう新入り、ようやく起きたみたいだな」

 背後から声が聞こえた。
 リーチェは振り向く。

 そこにいたのは小人の女だった。小人は年齢が分かりにくいので、何歳かは不明だ。
 短めの赤い髪に少しやんちゃそうな顔。小人なので体格は当然小さいが胸が結構ある。
 服装は奴隷らしくボロボロの服を着せられており、足に枷がつけられていた。

「ようこそ地獄へ」

 彼女はニヤリと笑いながらそう言った。

「あなたは?」

「名を名乗る時は、自分から名乗りなぁ」

「リーチェよ」

「私はパナだ。見ての通り小人だ。お前はエルフか。どっちもよく奴隷にされている雑魚種族だな」

「ここはBBCのアジトだよね?」

「そうだ。お前はどうやってここに来た?」

「捕まって……」

「攫われたのか。私も同じだ」

「で、出ないと」

 リーチェは立ち上がるが、動けない。足に枷にかけられており、さらに重い鉄球が枷に取り付けられているので、動く事が出来なかった。

「無駄だ。ここから出る事はできねーよ」

「……そんな」

 リーチェは顔を青ざめさせる。

「ま、今は大人しくしていろよ。これから後、少ししたら落ち込む暇もないほど、働かされるぜ」

「働かされるって、何させられるのよ」

「ここは鉱山なんだ。BBCの連中は俺たち奴隷を捕まえてきて、ただ同然の労働力で採掘をやっているんだ。取っているのは爆岩っていう、強い刺激を与えすぎると、爆発する岩だ。兵器なんかに良く使われる。採掘するのは危険だけど奴隷ならどれだけ死んでもいいからな」

「爆岩……」

「採掘はきつくてね。まともに休む事すら出来ず働かされるんだ。ほとんどの奴隷は、だいたい1年したら死ぬ。爆発で死ぬか過労で死ぬかは、個々によって違うけどね。奴らは奴隷なんてどれだけでも取ってこれると思っているから、酷使して殺すことにまったく躊躇してねーんだ」

 リーチェは怯える。とんでもない所に連れて来られた。自分はこれからどうなるのだろうか。運命を想像して震えた。

「起きろー! てめーら! 仕事の時間だぞー!」

 男の叫び声が聞こえる。

 何人かの男が牢を開けていく。そして、リーチェ達の牢も開かれた。

 牢を開いた男が中に入ってきて、リーチェとパナの鉄球を外す。その後、2人の手を紐で縛って、どこかに引っ張って連れて行く。

 大人の男の力に抵抗は出来ない。リーチェは大人しく歩いた。

 リーチェが連れて来られた場所は、赤い岩がある場所だ。なんだか熱い。
 この場には奴隷が大勢いる。100人以上は確実にいた。種族は劣等7種族だけで、それ以外の種族はいなかった。

「よし! じゃあいつも通りやれ!」

 と人間の男が大声で宣言した。この男がこの場を仕切っているみたいだった。
 合図と共に奴隷達が一斉に動き出して、採掘を開始する。

 リーチェは何をしていいのか分からずおろおろとする。

「おいお前! 何をボーッと突っ立ている!」

 怒鳴られてビクッとする。

「え、でも、何をしたらいいか。来たばっかりだし」

「ああ? お前、新入りか。新入りならほかの奴がやる所を見ていろ。見ていいのは今日の一回だけだから、よく見ていろよ? 間違えたら爆死するからな」

 そういわれた。リーチェは言われた通り、ほかの者たちが採掘する所を見る。

 かなり慎重に、採掘を行っているようだ。爆死すると言われたからには、とりあえずはやり方を覚えないといけない。リーチェは良く観察して、必死で細かい動きを覚えようとする。

 そして、ある程度リーチェは理解してきた。それほど複雑ではない。普通の採掘作業を慎重に行っているだけだと気付いた。
 岩には濃い赤色の場所と薄い赤色の場所があり、なるべく濃い場所は避けて採掘をしているのが見ていてよく分かった。あれに刺激を与えると爆発するのだろうとリーチェは推測した。

 そして、これだけ見れば作業できるようになるかな? と思った時、

 ドガァアァアアアアァアアアン!

 耳をつんざくような爆音が鳴り響いた。

「あーあ」「やっちまった」

 BBCのメンバーと思われる男達が、呟いている。
 リーチェは爆音がしたほうを見る。

 そこには、肉片や内臓を飛び散らせて爆死した、無残な死体がいくつか転がっていた。

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