第11話 蹂躙

2020年12月20日

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 まず、ペペロンは敵の戦力を冷静に分析する。
 敵の数は50人以上。種族はばらばら。人間もいれば三ツ眼もいれば、魔人もいれば、竜人も獣人もいる。
 よく観察すると、指示を送っているリーダー格の存在がいるようだ。BBCは軍隊と同じくリーダーの影響力が高い。あのリーダーを潰せば敵は総崩れになり逃げ出していくだろうが、今回の目的は敵の殲滅である。
 まず、相手がこちらを舐めているあいだに、出来るだけ多くの敵を一瞬で叩き潰すべきだと、ペペロンは判断した。

「いいか。逃げられると厄介だ。とにかく最初のうちから素早く、討ちもらしのないように殺せ」

 ペペロンはそう命令する。
 命令を聞き最初に動いたのはララだった。彼女は腰にかけていたシミターを引き抜く。怒っていたようだが、戦いをする際はいたって冷静に動く。近くに居たBBCの下っ端達を片っ端から切り殺していく。
 彼女の華麗な動きと共に血が舞いあがる。その景色は恐ろしくもどこか美しい。使用できる魔法が増えれば、ララは魔法も華麗に使いこなしながら戦闘を行うので、さらに幻想的な戦闘光景になる。

「な、なんだこいつ!?」

 BBCの連中はいきなりの攻撃に面を喰らう。ただし、弱いと思っていた相手がなぜか物凄く強かったという現実を受け入れられていないのか、動揺して動けなくなっている者はいるが、逃げ出している者はいない。

 今度はファナシアが物凄い速度で、BBCの下っ端共に向かって走って行く。ファナシアの戦闘はあまりにも単純だ。圧倒的速さで動き、敵が認知する前に斬る。首を正確に落とし、次々と斬り落として行く。敵がどう行動するか? どういった攻撃をしてくるのかなどの考慮は一切しない。ただ速く動いて斬る。それだけ。それだけだが、圧倒的な身体スペックを持った彼女を止められるものはいなかった。

「な、なんだこいつら!?」「化け物か!?」

 さすがにBBC達も現実を認知し出した。僅か数秒で30人ほど仲間がやられている。
 これは勝てるわけがないと考え出し、

「逃げるぞ! 引けー!」

 とリーダーの男が叫んだ。そして後ろに向かって逃げようとした時、

「詰みだ」

 後方の逃げ場をペペロンが塞いでいた。
 さすがにこのチビは弱いのでは? と思ったBBCのメンバー達は、

「どけチビ!」

 と叫びながらペペロンに攻撃する。

 ペペロンはその攻撃をかわしながら、剣を抜き敵を斬る。
 まるで当然の事のように斬られた味方を見て、BBCのメンバーは怯む。
 ペペロンは敵に考える暇など与えず、近くにいた者から、問答無用で斬っていく。

「うああああ!? 何だこいつは!? まるで息をするかのように人を斬っていきやがる!」

 一切感情を変えずに次々と敵を斬っていくペペロンを見て、得体の知れない恐怖を抱く、BBCの面々。

(しかし、1人1人斬っていくのは面倒だなぁ。20人はいるし……でも、今覚えている魔法を使うよりかは、こっちの方が効率がいいからなぁ。やっぱ早いとこ広範囲に攻撃できる魔法が欲しいな)

 ペペロンはそんなことを考えながら、斬りまくって行く。

 その後、ファナシア、ララがBBCの後ろから攻撃を加え、挟み撃ちの構えになる。もはや完全に逃げ場をなくし、アーシレス村を襲っていたBBCの連中は瞬く間に全滅した。

(とりあえず全員殺したよな。逃がした奴はいないはずだ)

 周囲を確認する。BBCの死体で地面は血に染まっている。まるで地獄のような場所にペペロンは立っていたが、それでも彼の心音は普段と同じリズムを刻んでいた。

「敵はもういないか?」

「いないようです。殲滅しました」

「そうか」

 全滅させたが、ララの怒りは今だ静まりきっていないようだ。同族が連れ去られそうになり、かなり頭に来ているようだった。

 とペペロンは若干ひやひやしながら考えていた。

「良くやったぞ二人とも。では死体を焼き払う。村の建物に引火してはいけないので、一旦外に集めて焼き払うぞ」

 死体をこのまま放りっぱなしにしてはおけない。証拠隠滅のためにも全て消し去るべきなのだ。

「はっ!」

「集めようー」

 2人は即座に返事をする。
 ペペロン達が死体を集めようとしたとき、

「あ、あの私たちも手伝います」

 村のエルフの1人がそう申し出てきた。先ほどまでの惨劇を見て、大半のエルフはペペロン達にも恐れを抱いているようだったが、助けてくれた事は理解しているので、勇気を出して手伝いを申し出てきたエルフがいた。
 1人が申し出ると、ほかのエルフ達も協力を次々に申し出てきた。

「多いほうが楽であるし、手伝ってくれるならお願いする」

 ペペロンはそう返答する。その後、町の外の少し開けた場所に死体を集めて、フレイムを使い死体を焼き払った。

 BBCの死体に紛れて、エルフの男の死体もあった。この死体はいじらず、村の者たちに引き渡した。

 死体を焼き払っても、細かい肉片や血のあとなどが残っている。それらは、土に埋めたり土をかぶせたりして分からないようにする。

 しばらくして掃除が終わった。

(これでBBCに目をつけられなければいいんだがな……)
 
 少しひやひやしながら思った。
 その後、1人のエルフがペペロンに近づいてきて、

「ありがとうございます……皆様が来なければどうなっていた事か……私はこの村の村長である、ルーシーでございます」

 ペコと行儀良く挨拶をした。ルーシーというエルフの女性だ。村の村長らしい。

「別によい。私の目が黒いうちはこのような悪事を見逃す事はありえぬ」

 ペペロンは胸を張って堂々と言った。最初は逃げる気満々だったものとは思えない言葉と態度だった。こうしたほうが部下とそれからエルフの村の者たちの好感度が、それなりに上がるだろうという浅ましい打算的な考えがあった。

 その考えは当たったのか、アーシレス村の住民達は尊敬に満ちた表情でペペロンを見ている。

「あの……あなた様は何者なのでしょうか?」

 ルーシーが尋ねた。その問いに答えたのは、ペペロンではなくララだった。

「この方は、7種族の救世主、至高の王、世界最高の大英雄、ペペロン様でございますわ」

(なんかやけに2つ名ついてるな……)

 口にはしないものの、どれか一つでいいだろ? と内心思うペペロン。 

 ただ、なぜかその威光が伝わったらしく、エルフ達はひれ伏している。そういえばこのゲームにはカリスマ性というステータスがあったなとペペロンは思い出す。
 カリスマ性が高ければ配下になるよう勧誘するときの成功率が上がったり、交渉の時に有利になりやすくなったりと、色々良い効果がある。
 王としてペペロンのカリスマ性は当然MAXの50まであるし、そのおかげでこんなあっさりとエルフ達はひれ伏したのだろう。
 しかし、それでクォレスの門番が態度を変えなかったという事は、よっぽど種族的なマイナスが大きいのだろう、とペペロンは自分達に立場が一般的にかなり低い事を再確認した。

「ペペロン様は至高の王でございますが、訳あって今は国を失っておられます。しかし、ペペロン様ご自身の威光、その優れた才覚をお使いになられ、国を蘇らせようとなされております。今日はその第一歩として、配下を集める所から始めようとしていた所だったのです」

 ララがそこまで語ると、村の村長であるルーシーが、

「配下を集めておられたのですか?」

「はい」

「では、アーシレス村の住民全員をペペロン様の配下にしてください!」

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