第31話 塔を登る

2020年12月20日

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「も、もしかして……た、倒したのか!?」

 ロックは、信じられない物を見たかの様な表情を浮かべる。
 ペペロンは、いや見りゃ分かるだろ、何言ってんだこいつと、彼の正気を疑った。
 ガードウォリアーは、先ほどのガードウルフよりも強い。それが突然現れるから、知らなかった場合は、高確率で殺されてしまう。たとえ知っていても、こんな短時間で簡単に倒せるような相手ではない。
 自分たちが想像しているより、遥かにあいつらは強いのでは? 冒険者パーティーは、ペペロンたちの認識を改めていた。
 ペペロンたちは、冒険者パーティーを気にすることなく、先に進もうとする。

「ま、待ってくれ!」

 そこで呼び止められる。

「君たち本当に強いんだな。恐れ入ったよ。これから先、僕たちと協力しながら行かないか?」

「協力?」

「ああ、協力した方が、攻略成功率も上がるはずだ。僕たちも君たちほどじゃないが、ある程度腕に覚えがあるからね」
 提案を受け、ペペロンは少し考える。

 攻略はこの冒険者たちの協力がなくても、確実に出来る。
 だが、パナやリーチェはまだ未熟なため、この先、危険もあるだろう。
 二人はそれを覚悟して付いてきてはいるだろうが、個人的に危険な目に遭わせたくはないと、ペペロンは思っていた。この冒険者の腕がどれほどか分からないが、ある程度実力があるのなら、パナとリーチェの危険も減るだろう。
 とりあえず実力を見て、使えなさそうなら置いていって、使えるなら協力しながら進んでいってもいいかもしれない。

「別に協力して進むのは構わないが、使えないと判断したら置いていくぞ。それでもいいなら、来ればいいだろう」

 ペペロンは考えをそのまま伝えた。

「ああ、それで構わないよ」

 ロックはそれを受け入れた。
 そのあと、両者自己紹介を済ませる。
 そしてペペロンたちと、冒険者パーティーは転送陣に入り、二階へ転送された。

 ボルフの塔は外見こそとんでもなく高く見えるが、階数は十五階くらいである。
 一階一階の天井までの高さが、とても高いのだ。
 見上げてみても、天井が見えないくらい高い。
 ペペロンたちは最初、二階のど真ん中にいた。
 この真ん中から、東西南北、それぞれの位置に転送陣が配置されている。三階に行ける転送陣はひとつだけ。違う転送陣の上に乗った場合、一階に転送される、もしくは、モンスターが大量にいる危険な部屋に転送される。
 いずれかの転送陣に近づくと、上の方から、ガードが出てくる。警戒を解いてはいけない。

「二階は東側だな」

 最上階までの行き方を記憶しているペペロンは、ここで乗るべく転送陣が分かっていた。

「知っているのか?」

「ああ、最上階まで全て記憶している」

「さ、最上階まで!?」

「君、この塔を完全攻略したのか!?」

 冒険者たちが驚く。

「いや、情報を知っているだけだ」

「そ、そうなのか……何か書物を見たのか?」

「知り得た方法は秘密だ」

「そうか……」

 秘密というより、言っても信じるわけないだろうから、言わない事にした。

「じゃあ、行くか」

 塔の真ん中の床には、方角が書かれている、それを見て東側に向かった。
 転送陣に近づくと、光が消えて、 上からガードスパイダーという、蜘蛛型の守護ゴーレムが五体落ちてきた。
 ガードスパイダーは、ガードウルフよりも弱いくらいなので、簡単に倒した。あっさり倒し過ぎたので、冒険者パーティーの実力は、測れなかった。
 そして、転送陣に乗り三階へ。

「今度は、南だ」

「え? 四階への転送陣は北よ?」

 ペペロンの言葉に反論したのは、魔法使いのメラーシ。彼女が冒険者パーティーの中では、一番記憶力が良く、知識量も豊富だった。

「その通りだが、南の転送陣に乗ると、モンスターハウスに転送される。そこのモンスターを倒すと、宝箱が出て、レアな魔法書を手に入れることができる」

 モンスターハウスとは、足を踏み入れた瞬間、大量のモンスターが出てくる空間のことである。
 ここ以外にも、転送陣がある遺跡はあるが、必ずと言っていいほど、モンスターハウスは存在する。

「ほ、本気で言ってるの?」

「ここレベルの遺跡のモンスターハウスなんて、足を踏み入れた瞬間死んでしまうぞ」

「ついてこれないと思ったら、来なくて構わないぞ。別に私たちだけで、殲滅させることは可能だしな」

「ま、マジで言っているのか?」

「嘘をついてどうする」

 ロックは狼狽える。それが本当なら、ペペロンたちは自分の思っているより、遥かに強い存在の可能性が高い。ここは付いていくと、足を引っ張る可能性もあると、どうするか悩み始める。
 ただ、ここでいかないと、トップクラスの実力を持つA冒険者としては失格だろう。
 ロックはそう考えて、

「行く」

「ロ、ロック!?」

「ここで行かないと、Aランク冒険者の名折れだ」

 ほかのパーティーメンバーも、ロックの覚悟を決めた表情を見て、ついていくと決めた。

 そして、南側にある転送陣まで行く。ガードスパイダーが出てきたので、殲滅。
 それから、転送陣の上に乗った。
 転送された場所は、四角い白一面の部屋だ。最初は何もなかったが、しばらくすると、部屋に大量の光の柱が立つ。
 柱は立った場所一つ一つから、モンスターが出現して来た。
 ファイアーバード、コカトリス、キラーベア、ワイバーンなど、ハイレベルなモンスターのみが、出現した。
 ロックたち冒険者メンバーが、緊張な面持ちであるのに対し、

「殲滅せよ」

 ペペロンは極めて冷静な表情で、指示を出した。

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