4.さらに吸収

2020年12月20日

     <<前へ 目次 次へ>>

 この谷を出るための出口探しを再開する前に、俺はスキルポイントというのを獲得したのを思い出した。

 スキルポイントって、スキル獲得したり、スキルLv上げたりしたりするのに使うんだろうけど、どうやって使えるんだろう? 
 ステータスに使い方なんて書いてないし。

 とりあえず、鑑定を強化してみるか。
 俺は「鑑定を強化!」と頭の中で念じてみた。

 すると、

『鑑定をLv2に上げるには、スキルポイントが10必要です。上げますか?』

 と聞かれた。出来るみたいだな。
 現在の俺のスキルポイントは、えーと…確か14だったな。
 少し迷うが、便利そうなスキルなので、上げることにした。

 これで鑑定がLv2に上昇。

 残りのスキルポイントは4だ。
 これで、隕石メテオも上げようとしたが、無理だった。
 20必要らしい。

 さて、この谷の出口を探しを始めよう。

 だいぶ強くなったとはいえ、今の俺以上になる強いモンスターがいないとも限らん。

 慎重に進もう。

 俺はゆっくり回りに気を配りながら、歩き始めた。

 ○

 歩いていたら、さっそく魔物に出くわした。

 トカゲのような魔物だ。
 ワニくらいの大きさの馬鹿デカいトカゲで、色は紫だ。
 それ以外これといった特徴はなく、本当にただのでかい紫色のトカゲ。

 俺はそのトカゲを鑑定してみる。

『ポイズンリザード♀ 11歳 Lv.14/29  
 猛毒を持っているトカゲ』

 下に説明が書かれるようになった。ステータスは書かれない。

 正直情報量少ないけど、Lv2だとこんなもんか。
 年齢も書かれるようになっているけど、ぶっちゃけそれはどうでもいい。

 猛毒を持っているのは少し怖いな。

 ただ動きはのろそうだ。
 遠くから隕石メテオを使って倒せばいい。

 そう考え、俺は距離をとろうとする。
 すると、ポイズンリザードが口を開け、紫色の液体を俺に向かって飛ばしてきた。
 間一髪で避けると、液体は後ろの岩に当たる。
 その岩がじゅわ~と音を立てて溶け出していった。

 その光景を見て、俺は身の毛がよだつ。

 避け損ねていたらどうなった? 防げたか? 防御が高いと防げるのか?
 いや、毒にたいする耐性が無くては、たぶん無理では?
 俺に毒耐性なんてものはないから、じゃあ、あれが当たったら後ろの岩みたいになるってことで……

 よし、いったん逃げよう。

 臆病風に吹かされた俺は逃走を選択。
 後ろから毒液を吐きまくってくるが、何とか避けて避けて避けまくる。

 スピードは俺の方が速いため、何とかまくことに成功。

 その後、俺は岩陰に隠れ、ポイズンリザードを観察している。

 奴は俺を探しているのか、キョロキョロと周りを見ている。

 しばらくすると、諦めて去ろうとする。

 さて、どうするか。
 殺すべきか。奴を吸収したら毒耐性が身に付くかもしれん。

 なるべく耐性は早く身につけたい、と俺みたいな臆病な人間は思っていた。

 やってやるか。

 隕石メテオ一発で殺せればいいのだが。
 頭に狙いを定めて落とそう。

 俺はポイズンリザードの頭めがけて、隕石メテオを落とした。

 完全に不意を突かれたポイズンリザードの頭に、隕石が直撃。

 グシャッ! 音が鳴り響き、ポイズンリザードの頭が粉砕される。
 血と先ほど飛ばしてきた毒が、地面に散らばる。

 俺は地面にある毒を避けながら、慎重にポイズンリザードに近づく。

 手に触れられる距離まで近づいて気づく。

 これ触っていい奴なのか?
 触れた瞬間、手が溶けたりしない?

 隕石メテオは溶けてないみたいだけど……心配だな。

 俺は髪の毛を一本抜いて、ポイズンリザードに落としてみる。

 溶けない。多分大丈夫かな?

 俺は恐る恐る触れる。
 大丈夫だった。

 今回は大丈夫だったが、触れないやつは吸収できないのか。
 そこはこのスキルの欠点にはなるな。

 俺はポイズンリザードを吸収。

 HP8上昇、MP2上昇、攻撃力2上昇、防御力1上昇、速度1上昇、スキルポイント1獲得

 スキル【強酸弾アシッドショットLv2】を獲得。
 耐性【毒耐性Lv1】を獲得。

 よし、毒耐性取れた。
 ついでにスキルもゲットだ。
 さっきのやつが使ってた技だな。

 ステータスは大して上昇しなかったが、スキルと耐性を取れたのは大きい。

 よし、この調子で出口を探しつつ、モンスターを倒して吸収するぞ。

 次にイノシシのような魔物を発見した。

 結構デカイ。
 が、並外れて大きいというわけでもない。

 大きさよりも目に付くところがある。
 額から生えている、長い角だ。

 螺旋状にねじれている角で、ビリビリと電気を纏っている。
 雷属性かこいつは。

 鑑定で見てみる。

『サンダーボア♂ 5歳 Lv.25/38
 雷属性のイノシシの魔物』

 やはり雷属性だ。
 こいつを吸収したら、雷属性の耐性が上がるかもな。

 ただ、少しレベルが高い気がする。
 倒せるだろうか?

 その分、吸収したときに上昇するステータスも大きいだろう。

 ちなみに俺はサンダーボアを遠くから見ている。
 遠くで見ながら、戦うか少し悩む。

 とりあえず、隕石メテオを落としてみよう。

 ここからじゃたぶん隕石メテオは届かない。
 説明しづらいのだが、感覚で何となく届くか届かないか分かるのだ。

 サンダーボアに当てるにはもう少し近づかないといけないな。

 俺は、そろ~と歩いて近づくが、少し近づいた瞬間、サンダーボアはこちらに気付いた。

 な、なぜばれた。あいつら鼻がきくのか?

 俺に気づいた瞬間、突進してくる。

 つーか速ぇええ! 俺より全然速いぞこいつ!

 しかも角から雷撃を放ってくる。
 雷撃なんて速すぎて当然避けられない。普通に喰らう。痛ぇ!

 あんまり電圧が高くないのか、そこまでダメージはないが、しびれてしばらく動きが止まる。

 その隙に、サンダーボアが全速力で俺の腹めがけて、角を突き刺してくる。

 やばっ! 死ぬ!

 と思った……が。

 角は確かに腹部に当たった。
 だが、突き刺さらなかった。逆にサンダーボアの角が折れたぐらいだ。

 どうも、こいつは速いけど攻撃力は低かったみたいだ。
 というより俺の防御力が高すぎたのか?

 そして、角が無くなったサンダーボアは、どうすればいいのか分からないみたいで、何だか俺の周りをうろうろしている。
 何だかかわいそうだな。
 でも、こいつを殺して吸収したら強くなれる。情けはかけない。

 でもどうやって殺すか。近くて隕石メテオは使えないし。
 さっき獲得した、強酸弾アシッドショットを使おう。

 全部溶かしたら駄目だと思うので、頭の辺りを狙って、撃つ。

 見事命中。

 ジュー、と音を立て頭だけが溶けた。

 何かここに来て、エグイ光景ばかり見ている気がするな、と思いながら、サンダーボアの死体に手を当てて吸収。

 HP10上昇、MP5上昇、攻撃力2上昇、防御力5上昇、速度15上昇、スキルポイント2獲得。
 スキル【雷撃サンダーショックLv2】獲得。
 耐性【雷耐性Lv1】獲得。

 よし、耐性とスキルゲット!
 あと速度がだいぶ上がった。
 あいつ速かったしな。

 スキルポイントが溜まったけど、何か上げようかな?

 いや一応、取っておこう。めっちゃ有能なスキルが今後手に入るかもしれない。

 今のステータスは、

 名前  テツヤ・タカハシ
 年齢  25
 レベル 1/1
 HP   158/158
 MP   39/64
 攻撃力 61
 防御力 113
 速さ  53
 スキルポイント 7
 スキル【死体吸収】【鑑定Lv2】【隕石メテオLv3】【強酸弾アシッドショットLv2】【雷撃サンダーショックLv2】
 耐性 【毒耐性Lv1】【雷耐性Lv1】

 こんな感じだ。
 俺はさらに谷を歩き出した。

 ○

 だいぶ歩いたから時間も経った。

 腹が減ってきた。
 死体吸収でも腹はたまらないらしい。

 魔物は死体吸収したいしなー。
 出来れば、植物とかを食べたいところだけど。

 基本的に何もないところなんだよ。

 きのこくらいしか生えてない。

 あ、でも毒耐性獲得したから、きのこ食ってもいいのかな?
 鑑定もあるし調べてみよう。

 小さめの茶色いきのこが生えている。
 普通のきのこっぽいし、これなら食えるんじゃ?
 それを鑑定してみる。

『死ダケ
 猛毒のきのこ。食べたらたいていの生物が即死する』

 うん。これはやめておこう。

 いや、名前が不穏すぎるし! 死ダケって!

 こんな普通のきのこみたいな見た目しておいて。

 つーかこれと同じきのこがそこら中に生えてる。
 だからここは死の谷って呼ばれてるのか?

 ほかのきのこは、俺を救ってくれたデカイきのこしかない。

 鑑定してみよう。

『弾みダケ
 巨大で弾力あるきのこ。致死性の無い毒がある』

 こいつも毒あるのかい。
 致死性はないみたいだけど。

 うーん、腹減ったしなー。死なないなら大丈夫なんじゃ?
 頭がおかしくなる毒とかだったら、死ぬより嫌だけど。

 どうしようかだいぶ悩んだ挙句、とりあえず口に入れてみることにした。
 さすがに口に入れただけで、死にはしないはずだ。
 やばそうなら、吐き出そう。

 俺は、きのこの下の白い部分を僅かにちぎって、口に入れた。

 うわ、めちゃくちゃまずい。にげー。

 すげーまずいけど、食えないって事はないか?
 何となくいけそうな気がする。
 俺はとりあえず飲み込んだ。

 うん、なんとも無い。
 とりあえず、腹に溜まるだけ食ってしまおう。

 正直めちゃくちゃ火が欲しい。焼いて食べたい。
 しかし、俺に火起こしのスキルはない。

 諦めて、生で食うしかないないな。

 俺は腹いっぱいになるまできのこを食べた。
 すると、

『毒耐性Lv1から2に上昇』

 と機械音が頭の中に響いた。

 毒を食えば上がるんだな。
 正直まずいから、あんま食いたくないけど。

 腹ごしらえを終えた俺は、再び歩き出した。

スポンサーリンク


     <<前へ 目次 次へ>>