第三十二話 出陣

2020年12月20日

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 ポーラハム神殿。

 草木の生えていない荒野の真ん中に、ポツンと立っている寂しげな神殿である。

 そこに飛王エマが数十人の部下を伴って訪れていた。

「……ここもだいぶ変わったが、神殿だけは変わらないな」

 エマは懐かしむように呟いた。

 神殿にエマは向かって歩く。

 すると、見えない壁が出現し、侵入を拒まれた。

「……結界か」

 エマは神殿の結界を破壊するため、剣を振るった。

 ズガァアアン!! という凄まじい音が鳴り響き、結界にひびが入る。

 しかし、壊れるまでには至らず。
 結界は修復しもとに戻った。

 一度駄目だっただけで、諦めることはなく、もう一度エマは剣を振るおうとする。

 すると、野太い声が神殿から聞こえてきた。

「やはり来たか。エマよ。残念ながら今のお前を神殿に入れるわけにはいかん」

 ポーラハム神殿の中から、土で出来た生物が出てくる。
 神殿を守る土の精霊である。

「……ドンダか。お前が私を入れようとするかしないかなど、関係はない。何があろうと私は神殿に入る」
「させぬよ」

 ドンダと呼ばれた土の精霊は、呪文を唱え始めた。

 すると、周囲の地面に無数の穴が出現、その中から黄土でできた人形が大量に出てきた。

 その人形は武装しており、エマや兵士たちを一斉に攻撃し始めた

 エマは目にも止まらぬスピードで動き、土人形たちを蹴散らしていく。

「私を止めようなどと無駄なことだ」
「今のは序の口だ。わしを見くびるでない」

 飛王エマと、土の精霊ドンダの争いが始まった

 早速ルルット城ではポーラハム神殿向かう準備を始めた。

 それほど大軍を今すぐ動かすことは不可能なので、精鋭を集めて出撃することに。

 あまり戦いの得意でないケルンは、作戦を考えてあとは家臣に任せるというスタイルであるのだが、彼女も珍しく出陣した。

 突如出陣することになり、家臣たちは戸惑っていたのだが、元々ケルンは内心は反飛王的な立場にいるので、これを機にジェードランと協力をして飛王を討つのかということで、それほど大きな反発はなかった。

 ルルット城から出陣し、それからバルスト城へと向かう

 なるべく早くポーラハム神殿に行かなければならないため、かなり急いで行軍し、予定日より五日早くバルスト城へと到着した。

 ジェードランは戻ってから、早速兵の準備をさせた。

「ジェードラン様……飛王を討つのですか?」
「それは状況次第だが……ポーラハム神殿を略奪していた場合、討つことになるだろう」
「可能ですか?」

 カフスは以前飛王と相対したときの、絶対的な力の差を鮮明に思い出し、勝つのは難しいだろうと思っていた。

「今回はルルット城の精鋭も来ている。負けるとは限らない。どの道、マナが行くというのなら行くしかあるまい」
「……そうですね」
「今回はお前も来い。城の運営は不安ではあるが、ほかの者に任せよう」
「かしこまりました」

 ルルット城の兵が味方したぐらいで、勝てる相手なのか大きな疑問があったが、それでも二人は覚悟を決めていた。

「ところでマナ様は、なぜポーラハム神殿に行きたがっているのでしょうか?」
「さあ、誰も尋ねていないし、本人の口からも聞いていないしな。まあ、理由などどうでもよい。行きたいというのなら、連れていってやればいいのだ」

 心の底ではジェードランも理由は気になっていたが、自分から話してこないのなら、無理聞くこともないと思っていた。

 バルスト城でも、いきなり大軍を動かすことは出来ないので、ルルット城と同じく精鋭だけが出陣することになった。

 総勢千名ほどで、ポーラハム神殿を目指すことになった。

「ポーラハム神殿はここバルスト城から南東にある。十日ほど歩けば到着するじゃろう」

 ケルンが地図を見ながら、ポーラハム神殿のある場所を説明した。

 食料の準備は出来ているので、問題なくポーラハム神殿まで行軍することは可能である。

 兵の総指揮はジェードランが担当することになった。
 ケルンは自分がやると主張したが、マナがジェードランに任せたいというと、渋々従った。

「それでは、出陣する!」

 ジェードランの指揮で、ポーラハム神殿に向けて出陣した。

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