37.本探し再開

2020年12月20日

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 勇者たちを撃退したあと、俺たちは図書館で刻印の情報や、メクの呪いの情報などが書かれた本を捜索する作業を開始した。

 街を救った功績で図書館に入る費用を免除すると言われたが、勇者に防壁をボロボロにされたのでその修繕費が必要だろうから、ここは払うことにした。
 大した値段ではないので問題はない。

 まずは前までと同じく、誰でも読むことが可能な本を読んで手掛かりを探すことにした。
 中々見つからない。
 途中リコに手伝ってもらうこともあった。
 リコは町が勇者に襲われたあと、色々やることが多くて大変らしい。
 ヴァーフォルのトップたちと、これからの方針を話し合ったり、戦いで死んだ兵士の遺族たちの悲しみを癒すため、祈りを捧げたり寄付をしたり、女の子であるリコだがLvが高く、筋力も結構あるので防壁の修繕作業を手伝ったり、本当に大変そうだ。
 それが原因で、倒れてしまった時があるようで、部下から休みを強制的に取らされたようだ。
 本が読むのが好きなリコは、息抜きを兼ねて調べ事を手伝うと申し出てきた。
 何だか悪い気もしたが、ストレスにはなってなさそうなので、手伝ってもらった。手伝って貰った期間は三日間である。

 それからしばらく探し続けたが、やはり簡単に見つけることは出来ず、許可を得なくても読める普通の本を全て調べてはみたものの、刻印かメクの呪いについて書かれている本は一つもなかった。

「うーん、やっぱりなかったかぁ」
「やはりここは、許可を得ないと読めない本を調べてみないと、見つからなさそうじゃのう」

 メクがそう結論を出した。

 図書館の司書に事情を話すと、「リコ様から許可はすでに得ています」といった。手回しが速いな。

「付いてきてください」

 司書はそう言って歩き出したので、言われた通り付いていく。

 立ち入り禁止と書かれた扉の鍵を開け、司書はその扉の向こうへと入っていく。

「ここが特殊図書が収納されている部屋です。ここの本は絶対に持ち出してはいけないので、それはお気を付けください」
「分かった。ここにはどんな本があるんだ?」
「禁止された魔法の本だったり……一般人が読んだら衝撃を受けるような歴史の話だったり、禁じられた儀式や技術が書かれている本だったり……色々ですよ……」

 とにかく禁止されているあまり良くない術が、本に書いているのだろうか。
 刻印や、メクの呪いも真っ当な方法ではないだろうから、ここにある本の中に書いてあっても不自然ではないな。

 本の量は決して少なくはないが、一般図書の本の量に比べると、全然少ない。これなら数日で調べ終えれると思う。

「じゃあ、早速調べるか」

 俺たちは本を読み始めた。

 本を探し始めて、数時間経過。

 題名を見ながら刻印のことが書いてありそうか、なさそうかまず判断をして、禁術書と呼ばれる本があったので読んでみた。

 文字は理解できるのだが、書いてある文が支離滅裂で内容がまるで理解できなかったため、読むのを断念。

 もしかしたらメクなら理解できるだろうと思い見せたところ、かなり苦戦したが何とか理解できたようだ。しかし、刻印と呪いに関する情報は書いていなかったようである。

 その後も呪いと刻印の情報が書いてありそうな本を探していく。
 だいぶ時間が立つ。
 腹も減ってきたし、疲れてきたので今日はここまでということになった。

「今日はなかったにゃー」
「まあ、一日目から簡単に見つかるもんじゃないだろう」

 一日目は空振りに終わり、宿へと戻った。

 翌日も本探しをする。

「こ、この本は!!」

 レーニャがびっくりしたような声をあげる。

 見つけたのか!? とは思わない。
 レーニャは刻印や呪いの本を探してはいるのだが、自分が個人的に気になる本を見つけたらそれを読んでしまうのである

「どんな本があったのじゃ……?」

 メクもレーニャのことは分かっているので、若干呆れた口調で尋ねた。

「禁断の料理100選! 食べたらうますぎて精神が死んでしまう料理一覧にゃ!」

 案の定料理の本だった。
 しかし食べたらうますぎて死ぬって、怖いなおい。ここに置いてある本なだけあるな。

「相変わらずお主は……真面目に探せ真面目に!」
「にゃー……」

 メクに怒られてへこむのも、いつもの光景である。

「ごめんなさいにゃ。一応もう一つ見つけたんだけど、こっちもいらないかにゃ……」
「どうせ食べ物関連なんじゃろ?」
「そうじゃないにゃ。『生命の魔女について』って本なんだけど」
「ほらやっぱ……りじゃない。生命の魔女……?」
「これにゃ」

 レーニャは白い本を俺たちに見せた。

 表紙は題名の生命の魔女についての文字以外は、白色である。

「生命の魔女か……」
「メクに呪いをかけたのって魔女だったっけ」
「わしは声しか聴いておらぬから何とも言えぬが、女の声だったのは間違いない」
「じゃあ、魔女の可能性もあるか。でも生命の魔女って何か呪いをかける感じに聞こえないけどな」
「わしもそう思うがのう。一応読んでみるか。レーニャ良く見つけてくれた」
「にゃはは」

 メクに褒められて少し嬉しそうにしながら、レーニャはメクに本を渡した。

 メクがそれを読んでいく。

 呪いについて書いてあるのかは気になるところだが、ここは本探しを続ける。

 中々良さげな本が見つからず、数分経過。
 すると、

「これは……!!」

 メクが大声をあげた。

「どうしたんだ?」
「いや……うむ……そうか……」
「手掛かりがあったかにゃ?」

 レーニャの問いに、

「この生命の魔女がわしに呪いをかけた女なのかもしれん」

 メクはそう答えた

「何て書いてあったんだ?」

 俺はメクに本に何が書いてあったのかを尋ねた。

「生命の魔女に関する記述じゃ。この魔女はほかの者には使えぬ独自の魔法をいくつも作り出しておるらしい。他人の傷を一瞬で全快させたり、心の傷をいやしたり、新たな命を作り出したり……その手の魔法を使うことから生命の魔女と言われているようじゃな」
「話を聞く限りなんか悪いやつには思えないんだけど」
「基本的には良い存在なのじゃが、時には人をぬいぐるみの姿に変えてしまう事もあると書いてあった。まさしくこの生命の魔女がわしをぬいぐるみの姿にしたとして間違いあるまい」

 メクはそう言いながら、本をその記述がある箇所を俺に見せてきた。
 確かに、生命の魔女は他人をぬいぐるみの姿にすることもあるそうだ、理由は知られていない、と書いてある。

「でも、これ何年前の本なの? そんな昔からいるのかな生命の魔女って。今も生きているのか?」
「この本は数十年前に書かれたものじゃろうな。生命の魔女はこの本が書かれた何百年も前から存在するらしいのじゃ。どうやら寿命を延ばす術を有しているようじゃな。まあ、今も生きているかどうかは分からんが、基本的に呪いだとか魔法だとかは、使用者が死んだら解けるものじゃからな。まだ生きている可能性が高いとわしは思っておる」

 まあ、魔女の魔法は特殊らしいし、普通の魔法とは違う可能性もある。
 仮にかけたものが死んでいるのに、メクの魔法が解けていないというのなら、手詰まりである。生きていると信じたほうがいいだろうな

「しかし、基本的に良い存在と書いてあるが、何だか腹が立つのう。じゃあ、なぜわしをぬいぐるみにしたのだ」
「師匠なんかやっちゃったかにゃ?」
「何もやっとらんわ! ……多分」

 少し自信なさげなのはなぜなのだろうか……

「ま、まあ昔のわしは多少やんちゃすることもありはしたが、それでもこのような仕打ちをされなければならぬほど、悪いことをした覚えはない。やはり生命の魔女許すまじ。多少いい存在なのだろうが何だろうが、会って呪いを解かせたら一発殴る。いや、殴るのではなくアイススピアをお見舞するのじゃ」

 メクは怒るべき相手が判明して、怒りを徐々に上昇させていく。

「その生命の魔女ってのはどこにいるんだ?」
「この本が書かれたときは、ルクファナの森というところに住処を作っておったらしい。その森があるのはクレンフォス王国と書いてある。獣人が支配する国じゃな。ここからは確か結構遠くにあった国のはずじゃ。まあ、だいぶ前の情報じゃらかすでに住処を変えておる可能性もあるがのう」
「でも行ったら手掛かりがあるかもしれないし、行くべきだと思うぞ」
「そうじゃな、では早速クレンフォス王国まで行く準備を……」

 とここまで行ってメクは俺とレーニャの顔を見る。

「これはお主の刻印とは無関係の出来事かもしれぬから、お主はここに残って調べ物をしても……」
「何だよ水くさいな今更そんなことを言うなんて。刻印には関係ないかもしれないけど、メクだけで行かせるなんてできるかよ」
「そうにゃ。アタシもテツヤも一緒に行くにゃ」
「そ、そうか……」

 メクは少し安心したように言う。

「分かった。仮に今回の旅で元の姿に戻っても、わしはテツヤの刻印を消すまでは国には戻らん。約束する」
「何かそう約束されると、ファラシオンの人たちに申し訳ない気もしてきたな……」
「サクがいるから何とかなるじゃろうファラシオンは」

 そのサクさんが一番メクがいなくて、困ってたような気がするけど。
 まあ、メクがいないと途端にどうすればいいのか分からなくなりそうだ。メクのアドバイスがあったからここまでこれたという事もある。元の姿に戻ったメクと一緒に冒険するというのは、少し、いやかなり緊張しそうな気もするけど。

「じゃあ、クレンフォスまで行く準備を始めるかのう。遠いから念入りに準備をするのじゃ」

 俺たちは図書館を出て、クレンフォスまで行く準備を開始した。

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