7.共闘

2020年12月20日

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 一緒に倒すか。
 率直に、悪くない提案だと俺は、

「いいんじゃないか?」

 と返答した。

「ふむ、なるほど。いいとは思うのじゃが、いかんせんわしはテツヤの強さを知らんからのう」
「強いって言ってるのににゃ~」
「どのくらい強いかが、分からんと言うておるのじゃ。そうじゃ、ステータスを見せてくれんかのう?」

 ステータスってあれ人に見せることが可能なのか。
 まあ、板で出てくるからな。見ようと思えば見せられるか。

 俺は「ステータスオープン」と言って見せた。ちなみに今のステータスは、

 名前  テツヤ・タカハシ
 年齢  25
 レベル 1/1
 HP   159/159
 MP   40/69
 攻撃力 62
 防御力 114
 速さ  73
 スキルポイント 10
 スキル【死体吸収】【鑑定Lv2】【隕石メテオLv3】【強酸弾アシッドショットLv2】【雷撃サンダーショックLv2】【吸い取り糸アブソーブスレッドLv1】
 耐性 【毒耐性Lv2】【雷耐性Lv1】

 こんな感じだ。
 メクは俺のステータスを見て、

「……な、なんじゃこのステータスは……?」

 と驚愕している。

「レベル1なのに、ステータスがどれも高水準。防御力にいたっては100を超えておるとは……スキルも通常人間が習得不可能な技もいくつも持っておる。【死体吸収】というスキルにいたっては、聞いたことすらない」
「うわすごいにゃ! どれもアタシの倍以上のステータスだにゃ~……でも、レベル1ってどうしてにゃんだろ?」

 メクは戸惑いながら呟き、レーニャは感心したあと、レベル1というのに疑問を持っている。

 やはりこの世界の常識的に、レベル1でこのステータスというのは、かなりおかしいらしい。
 そして【死体吸収】は、珍しいスキルのようだ。

「お主、何者だ?」
「いや……その。【死体吸収】ってスキルがあるでしょ。最初からこれもっててさ、これが結構使えるスキルで……」

 俺は【死体吸収】の説明を行った。

「死体の能力を吸収すると……な。まったく聞いた事の無い能力じゃな」
「で、どう? 倒せそう?」
「飛び抜けて防御が高いから、敵の攻撃はだいぶ防げるじゃろう。素早さも問題のない数字じゃ。若干攻撃に不安があるのう。敵は固いからな。まあ、抜け道にはいろんな魔物がおる。倒して、お主のスキルで吸収していけば、強くなれるじゃろうし。レーニャと共闘すれば倒せるくらいにはなるじゃろう」

 今のままでは倒せないかもしれないが、強化すれば倒せるようになれるか。

「じゃあ、倒せるのにゃん? やったにゃん! やっとここから出れるにゃん!」

 レーニャは嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる。
 よほど出られそうな事が嬉しいみたいだ。

 まあ、この谷にずっといるなんて、正直いやだよな。
 どのくらい、いたかは分からないけど、この部屋の感じを見ると一週間やそこらじゃなさそうだし。

「まだ出られると決まってはおらんがのう。というよりお主が途中でやられないかが心配じゃ。もうちょっと強くなってから行った方がよいかもしれんぞ?」

 メクはレーニャにそう言った。

「えー! 出れるにゃら今すぐ出るにゃ! アタシもちょっとは強くなったにゃ! 今日やられたのはちょっと油断しちゃったからにゃ!」」

 レーニャは反発する。

 俺としても早く出れることなら出たいな。

「そうかの。まあ、わしも早く出たいしな。じゃあ、行くのはさっそく明日にするがよいか?」
「大丈夫だ」
「行くにゃー」

 明日、谷の抜け道に行くことに決定した。

 そのあと、ご飯をごちそうになった。
 魔物の肉をとってあるらしく、簡単な火の魔法をレーニャは使えるので、その肉を焼いて食べた。
 ぬいぐるみ状態のメクは食べる必要がないらしく、何も食べていなかった。

 ちなみに魔法はスキルとは少し違うものらしい。
 スキルはスキルポイントを使って、習得しないと使えないが、魔法は呪文さえ唱えれば誰でも使える。
 ただし、使うために必要なMPが、スキルに比べて多いのだそうだ。

 今回レーニャの使った魔法【小火スモールファイア】のように、弱い魔法はたいしてMPを消費せずに使える。
 俺もいくつか、便利な魔法を教えてもらった。
 その【小火(スモールファイア)】と、辺りを照らせる【小光スモールライト】の二つを教えてもらった。

 それと、呪文は、【小火スモールファイア】が「火よ」で、【小光スモールライト】が「光よ」と非常に単純だ。さすがにこれならすぐ覚えられる。

 飯を食べた後は、寝るのだが、

「にゃー……テツヤー……撫でて欲しいにゃ~」

 とレーニャが頼んできた。
 眠そうな表情をしている。

 そして「うにゃー」といいながら、俺の近くにすり寄って来て、頭を差し出してきた。

 俺は若干困る。
 最初撫でたのは、猫を撫でるつもりで撫でていたから、一切抵抗がなく撫でれたが、やはり女の子の頭を撫でるというのは少し緊張するというか……

 しかし、レーニャは、

「にゃー……撫でるにゃー」

 と頼んできている。

 困った俺は、何となくメクの方を見ている。

 メクは何も言わずに、ジーと俺を見ていた。

 これは、どうなんだ? 撫でろってことなの? 撫でるなってことなの?

「にゃ~、早く撫でるにゃ~」

 レーニャがじれったそうに頭を押し付けてくる。

 仕方ないここは撫でるしかない。
 俺は意を決してレーニャの頭を撫でた。

 俺はなるべく優しく、気を使いながら頭を撫でる。

 レーニャは撫でられているときは、うにゃーと気持ち良さそうな声を出し、しばらくして寝息を立て始めた。

「だいぶ懐いているようじゃの」

 ここで、メクが声をかけてきた。

「ただ、懐いているからと言って、変な事をするでないぞ。わしは眠らないでよい体だから、常に見張っておるからな」
「へ、変な事ってなんだ変な事って、するかそんなこと!」
「そうじゃのう。レーニャも悪い奴には懐かんじゃろうからの。お主がそんなことする奴には見えんが、念のためな」

 妙な疑いをかけられて、ドキッとする。
 実際、こんな年下の子にあれこれする気はない。というか、仮に歳が近くてもそんな度胸はない。
 伊達に25年間、童貞をやってはいない。

「わしらも二年はこの谷におるが、遂に明日ここを出られるかのう」

 二年もここにいるのか!? 俺は驚く。
 俺なんて一日いただけでも、だいぶ嫌気が差してきたのに、二年もいたのか。

 明日は絶対に、勝ってこの谷を出ないとな。

 使命感みたいなものが俺の胸にわいてきた。

 その後、眠気が襲ってきたので俺も寝た。

 翌日の早朝、俺達は家を出て抜け道に向かった。

 先頭をメクがトコトコと歩いている。

 道中、魔物が穴から出てきているのを発見。
 魔物も死霊に襲われるらしく、夜になったら魔物達も本能的に巣穴などに隠れて、襲われないようにするという。

 ちなみに出てきた魔物はゴブリンだった。
 3体出たので倒して、死体吸収する。

 HP15上昇、MP3上昇、攻撃力3上昇、防御力3上昇、速度3上昇、スキルポイント3獲得。

 3体合わせてそれだけ上昇した。

「それが、死体吸収か」
「吸い込まれちゃったにゃー」

 俺のスキルを初めて見て、驚くメクとレーニャ。

「それでどのくらいステータスは上がるのじゃ?」
「えーと」

 俺は上がった数値を伝える。

「ゴブリン一体で1上がるのか。ゴブリンなんてこの谷を出れば山ほどいるから、倒して吸収しまくれば無敵になれるぞお主」
「そうなの?」
「普通、レベルの場合は弱い奴だけを倒していても、上がらんのじゃがな。その能力も、もしかしたらそのうち、弱い奴を吸収しても、一切ステータスが上がらなくなるかものう」

 そういう制約が出来てくる可能性もあるか。

 でも、ゴブリンだけ殺して強くなるって何かやだな。
 俺、ゴブリンス○イヤーじゃねーし。
 まあ、それが強くなるのに一番効率的なら、やるかもしれないけど。

「あとどれくらいで着くんだ?」
「もうすぐ着くぞ。中にはその辺に出てくる魔物より強い奴らが出るからな。気を引き締めるんじゃぞ」

 そういわれて、俺は少し気を引き締めなおす。

「にゃーにゃー。テツヤは外に出たらなにがしたいにゃん?」

 気を引き締めろと言われたが、お構い無しと言う感じのお気楽な調子で、レーニャが尋ねてきた。

 外に出たら何がしたい……?
 具体的には考えてなかったな。

 とにかく生き残る。としか考えてなかったし。
 冒険者になって稼ぎつつ生きるとか?

「アタシはおいしいものいっぱい食べるにゃん! 記憶がないから分からにゃいけど、外にはおいしいものがいっぱいあるって師匠から聞いたのにゃ」

 レーニャは心底楽しみだというようすで言う。

「おいしいものか。それは俺も食べたいな。あのデカイきのこめちゃくちゃまずかったし」
「えー? テツヤきのこ食べちゃったのにゃん!? あれは食べるにゃって師匠が言ってのにゃ! 大丈夫なのにゃ!?」
「テツヤは毒耐性を持っておったし大丈夫じゃろう。それよりも気を引き締めろといったじゃろ。もう着くぞ?」

 少し怒ったような口調で、メクが言う。

「師匠は外に出てやりたい事はないの?」
「当然、この呪いを解くのじゃ。一体何十年この体で過ごしてきたことか……いい加減、解く方法を見つけないといかん」

 何十年って恐ろしい言葉が……
 そんな長いあいだ、この体なのかメクは。

「お、着いた。ここが抜け道じゃ」

 メクが示す先には大きな洞窟の入り口がある。

「この洞窟を抜ければ、出られるのか?」
「ああ、結構長いぞ。二日くらいはかかるかもな」

 二日かかるのか。

「にゃー! 行くにゃー!」

 レーニャが元気よく洞窟に入っていき、俺とメクもあとに続いた。

 ○

 洞窟に入りしばらくして魔物に遭遇した。
 ちなみにこの洞窟は、前の洞窟みたいに光るきのこがないので、【小光スモールライト】を使って辺りを照らしながら進んでいる。

 出現した魔物は、火で燃えているイタチみたいな奴だった。

 背中の部分が激しく燃えている。こいつが一匹出てきた。
 俺は鑑定を使いどんな魔物か調べる。

『フレイムウィーズル 10歳 29/36
 炎を纏ったイタチの魔物』

 レベルはそこそこ高い。
 炎を纏ったイタチなのはみたまんまだな。

「うにゃー……熱いのきらいにゃ~……」

 レーニャは怯えている。

「フレイムウィーズルか、少し厄介な奴が出てきたな。わしは打撃には強いが燃やされたら一巻の終わりじゃからな……」

 ぬいぐるみだし、よく燃えそうだな……

 俺は、まず【吸い取り糸アブソーブスレッド】を使用。
 糸を敵にくっつける。

 が、くっついた瞬間燃えた。
 ……この糸、耐火性ゼロなのか。

 敵が炎で攻撃をしてくる。

 炎の玉が三発撃たれ、俺、レーニャ、メク、それぞれに飛んでいった。

 若干隙が出来た俺は慌てて避ける。びっくりしたー。
 レーニャは火が本能的に恐いのか、「にゃあ!」と叫びながら避けている。
 火が当たるのがまずいと言っていたメクだが、一番冷静に避けていた。

 動きも速い。ステータスが弱体化していると言っていたが、動きはかなり良さそうだ

 俺は気を取り直して、攻撃を開始。

 この洞窟は天井が高いので、【隕石メテオ】が使用できそうだ。

 俺は【隕石メテオ】をフレイムウィーズルに落とす。

 ずどーーん! と音を立てて命中した。

 大ダメージを与えたみたいだが、まだもぞもぞと動いている。
 俺はとどめに、近づいて頭を蹴り付けた。

 蹴られたフレイムウィーズルは、ピクピクと少し動くがその後、ピタリと動かなくなった。

 たぶん死んだかな?

 俺は確認するため、近づいて触る。
 そして吸収できるようなので吸収した。

 HP30上昇、MP3上昇、攻撃力5上昇、防御力2上昇、速さ2上昇、スキルポイント2獲得
 スキル【炎玉フレイムボールLv.2】獲得。
 耐性【炎耐性Lv.1】獲得。

「結構攻撃力上がった」
「ふむ、奴は攻撃力は高い魔物じゃからの。敵のステータスによって得られるポイントが、変動しておるのか」

 それは俺もそう思っていた。

「うにゃー。何も出来なかったにゃ~……次はちゃんと戦うにゃ!」」

 レーニャは悔しそうな表情で、そう宣言をした。

 俺達はさらに洞窟の奥へと進んでいった。

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