46.洞窟の中

2020年12月20日

     <<前へ 目次 次へ>>

 ポポダータスは、『マジョサマ』とメクを見ていった。

 魔女とは生命の魔女の事か? ルリと同じく見間違えているのだろうか。

 ということはここに生命の魔女がいるのかな?

 長いこと探して来たけど、ようやく会えるかもしれん。

「マテ、コイツ、マジョサマチガウ。マジョサマ、イロクロイ」

 中にはそれなりに観察力のあるポポターダスもいるようだ。

「マジョサマノマネスル、ナンノタメ?」

 ポポターダスはメクを睨み付けてきた。
 警戒しているようだ。

 こいつらの口ぶりを見る限り、魔女をだいぶ尊敬しているようだ。魔法の力で、魔物を味方にしているのだろうか?

 この近くに住んでいそうだ。
 もしかしたら洞窟の中に魔女の家があるかもしれない。

 魔法で居場所を快適にすることが出来るようだし、こんな辛気臭い場所に家を作っても問題はないはずだ。

 一度メクに一芝居打ってもらって、洞窟の中を調べた方がいいだろう。
 色はイメチェンしたとかいえば、あっさり信じそうだ。
 メクならば言わなくても、その通りしてくれるだろう。

「真似などしとらんわ! わしはメクじゃ! 魔女などと間違われて非常に不愉快である!」

 と思ったら必死に否定した。
 そ、そんなに魔女と思われることが嫌いなのか。憎んでいる相手なので仕方ないのかもしれないが。

 俺は小声でここは本物の魔女のフリをするよう頼んだ。

「ぐ……そうか……確かにこの場はそうした方が……仕方ない」

 メクは声色を変えて、

「というのは冗談で、確かにわしは生命の魔女じゃー。色が違うのはちょっと気分を変えてみただけ。いつも同じ色だと、つまらんじゃろ?」

 棒読みでそう言った。
 口調もそのままだし、あまり演技ができるタイプではメクはないらしい。

 ただポポターダスは騙されたようだ。

「ソウダッタノカ。タシカニ、イツモイッショ、ツモラナイ」
「トコロデ、ホカノヤツラハ、ナンナンダ?」

 俺たちの事を聞かれた。ここは友達かなんかと言えばいいだろう。

「こ、こいつらは友達じゃー。危険はないから手を出すでないぞー」
「トモダチ。マジョサマノトモダチナラ、カンゲイ」

 中に入れてくれた。

 一応戦わずに入れるようだな。
 会話できる奴らは、なるべく殺したくはない。

 洞窟の中にはポポターダスが大勢住んでいた。
 かなりデカい連中が50体以上はいるので、なかなかの迫力である。

 いざ戦いになった時は、すぐさま応戦できるよう警戒心を高めながら歩く。

 俺たちはポポターダスに不審な目で見られたが、生命の魔女の友達だと説明すると、すぐに警戒心を解いた。相当慕われているようだ。

 さて住処はどこにあるか。
 ポポターダスに尋ねたら、流石に怪しまれるだろう。自分の家が分らなくなるとは考えにくい。

 ただ、変にウロウロして探すのも怪しまれそうだが……

 今のところはウロウロして探すしかないか。

「こ、これ!」

 歩いているとルリが何かを見つけて声を上げた。

 割れた水晶玉のようなものが落ちていた。

「こ、これ師匠が作った魔法水晶ですよ! 間違いありません! 何度か使って壊れたから捨てたんだと思います!」
「確かか? そんなものがここにあるということは……本当に生命の魔女はここに住んでおるのかのう」

 メクはそう推測した。

 すると、

「アイツラデス! ニセノマジョサマハ!」

 ポポターダスの声が聞こえてきた。

 驚いて声の聞こえてきた方を向くと、黒い色のメクとそっくりのぬいぐるみがポポターダスを従えて、こちらに歩いてきていた。

「コノマジョサマ、ホンモノ。オマエラニセモノ。ニセモノ、コロス」

 物騒なことを言いながら、ポポターダスは武器を構える。

 ポポターダスを率いている、あの黒いぬいぐるみ。
 あれが生命の魔女なのだろうか。

「師匠!」

 ルリが現れたぬいぐるみを見てそう叫んだ。やっぱりあれが生命の魔女なのか?

「あれ? ルリじゃないかい。それと、本当に私の偽物もいる。うーん、どういう状況だいこれは」

 ぬいぐるみはそう呟いた。

 口ぶりからして奴が生命の魔女で間違いなようだな。

「コロス。コロス」

 そう言いながら、ポポターダスが俺たちに襲い掛かってくるが、それを生命の魔女が止めた。

「やめろ。そいつらは私の客人だ。襲うんじゃない」

 魔女の言葉一つでポポターダスが達は襲うのをやめた。
 そうとう飼いならしてあるようだ。

「付いてきて。私の家に案内してあげる」

 そう言って生命の魔女は歩き始めた。

 俺たちは後を付けていく。

「師匠! 会いたかったですよー!」
「何でアンタはここにいるんだい?」
「探しに来たんですよ~。長い間、帰ってこないから心配してたんですよ! このテツヤさん達が一緒に探してくれたんです」
「そうか……悪かったね。寂しい思いをさせて」

 申し訳なさそうに生命の魔女は言った。

 その後も歩き続けて、洞窟の一番奥に到着した。
 生命の魔女は洞窟の壁に手をかざす。すると、壁が割れて開いた。隠し扉だったようだ。

「さあ、中に入って」

 そう言いながら生命の魔女が中に入っていくので、俺たちも中に入った。

 全員が入った瞬間、自動的に隠し扉が閉まった。

「ようやく会えたのう……」

 その瞬間、メクがいきなり走って、生命の魔女に対して飛び蹴りをした。さっきまでやたら大人しいと思っていたが、ポポターダスがいるから面倒なことになりそうなので、タイミングを計っていたのだろうか。
 ぬいぐるみの姿なので、飛び蹴りに全く威力はなく、生命の魔女にダメージはない。

「さあ、わしを元の姿に戻せ! 今すぐ戻せ!」
「な、何だねいきなり」

 生命の魔女は困惑する。

「何だねじゃない! 貴様がわしをこの姿にしたんじゃろ!」
「うーん。私以外にその魔法を使う人はいないだろうから、多分そうだと思うけど。とにかく、ちょっと落ち着いてくれよ。自己紹介しようとしてたのに」

 メクはそれを聞いて、少し心を落ち着かせ生命の魔女から離れた。

 そのあと、生命の魔女は何やら呪文を唱え始める。

 体が徐々に黒い靄に覆われていき、しばらくたつとぬいぐるみではなく、人型になっていた。

 これが生命の魔女の本当の姿か。

 人間のような姿だが、頭から角を生やしている。
 そういえば、人間ではなく魔人だという話だったな。

「私はクラリカ・メンシャムだ。生命の魔女と呼ばれてもいるね。まずは、ルリをここまで連れてきてお礼を言おう」

スポンサーリンク


     <<前へ 目次 次へ>>