44.魚人の国

2020年12月20日

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 新しい仲間のルリを連れて俺たちは、南まで向かった。

 北から南のルスター王国まで行くという事で、かなり時間がかかった。

 なるべく早くルスターまで行きたかったので、道中のレベル上げなどは全くせずに向かった。

「なあ、ルスター王国ってどんな国なんだ?」

 途中、俺はルスター王国について、メクに尋ねてみた。

「ルスター王国は魚人が住んでいる国じゃ。魚人は魚と人間両方の特徴を持つ種族のことじゃな。海に面している国でもある」
「魚人か」

 メクは魚人について少し詳しく説明してくれた。
 泳ぎが得意で、陸の上でも海の中でも生きていくことが出来る。
 一生陸の上で過ごす魚人もいれば、海の中で暮らし続けていく魚人もいるようだ。一定期間水に入らなければ死ぬとか、陸の上に上がらなければしぬだとか、そういう制限はないようである。

「ルスター王国は陸の領地だけで見ると狭い方じゃ。ただこの国は海に面している国で、海にも魚人が住んでおるから、人口はかなり多いらしいのう。海まで含めると相当巨大な国家なのじゃ」
「へー」
「じゃが、海に住んでいる魚人と、陸に住んでいる魚人はあまり仲が良くない。有事の際は協力することもあるそうだが、いがみ合っていいるのじゃとかな。何でそんなにいがみ合うかはようわからん。一応王国というだけあって、王族が支配しておるのじゃが、海に住んでいる魚人たちはあまり言う事を聞かぬらしいから、単純に支配されるのが嫌な者たちが海にいるのかもしれんな」
「ねーねーテツヤ、魚ってなんにゃ?」

 と横からレーニャが質問してきた。

「知らないのか?」
「見たことないにゃ」

 海は確かに見ていないが、湖や川はあるし知っていると思ったが知らないのか。

「水の中に生きている生物だ」
「えー? 水の中では息できないにゃ」
「それが魚は息が出来るんだ」
「どうやって?」
「それは、鰓呼吸をしているというか……」
「えら?」
「魚の頬辺りについてる……えーと、とにかく水の中でも息が出来るんだ」

 途中で説明が面倒になって、無理やりまとめた。

 それから数か月後、ようやくルスター王国にたどり着いた。

 ルスター王国に入り、魚人たちを何人か見てきたが割とフレンドリーな種族だった。人間を下等生物と見下していたりはしないようである。

 途中に立ち寄った街で、どこに行けばモーエン島まで行けるのか情報を集めて、南西部にあるファスという海に面した都市に行けばいいという話を聞いた。

 俺たちは大急ぎでファスまで向かった。

 俺たちは港町のファスに到着した。

「うわー、凄いにゃ」

 正直、ルスター王国に入ってから、大きな規模の町はなく、あまり発展していない国なのかと思ったが、ファスに到着してその考えを俺は改めた。
 とにかく魚人が大勢いて、賑わっている。

 恐らく内陸地はあまり人がいないため、発展しておらず、海に面している地域はかなり発展しているのだろう。

 元々海やら川に面したところのほうが、発展しやすいというイメージはあったが、魚人だとそれがさらに顕著に現れるのだろう。

 モーエン島まで行くのには船で行くと思うのだが、ここで疑問が発生する。

 この国って舟とかあるのか?

 だって魚人って鰓呼吸しながら泳げるわけだし、舟なんて不必要なのではないか?

 仮になかった場合どうするんだ。

 近くに通りかかった魚人に尋ねてみると、

「船? ああ、あるよ。魚人以外の観光客もいるし、そもそも魚人も泳ぐのは疲れるから、楽したい奴は船に乗ることもあるんだ」

 鮫っぽい見た目の魚人の男がそう答えた。
 そうだったのかそれは良かった。

「船に乗るってことは、どっかの島に行きたいのかい?」
「島は複数あるのか?」
「たくさんあるよ。二十以上はある。一番有名なのはルーファス島かな」
「俺が行きたいのはモーエン島だ」
「……モーエン島、あー、あの火山がある島か」

 火山があるのか。
 何か暑そうなイメージだな。

 そもそもこのファスは結構暑い。

 風が良く吹いて、そこまで湿気が高いという事もないので、日本のジメジメした嫌な暑さよりは、まだ平気である。

 レーニャは暑いより寒い方が苦手なのか、特に苦しそうではない。

 逆に寒い地域に住んでいたルリは、暑さに慣れていないようでかなりへばっている。

「モーエン島に行くまでの船はどこで乗れるだろうか?」
「そこまでは知らんな。俺は泳ぐのが大好き何で船には乗らんからね。港があるからそこに行って尋ねてきてみたらどうだ?」

 親切に教えてくれた。
 正直見た目が鮫っぽっかったので、怖いから声をかけるか躊躇したんだが、良い人で良かった。

「暑いです~……氷魔法を使って周囲を凍り付かせていいですか?」

 いきなりルリが物騒な発言をしてきた。

「駄目だ。我慢してくれ……」
「そんなぁ……」

 そんなことをしたらお尋ね者になってしまって、島に行くどころではなくなるだろう。

「てか、自分だけ冷やす魔法とかないのか?」
「えー? ……あー……そういえば一つだけありました」

 そう言ってルリは魔法を使う。

 小さい氷の球がルリの周囲をグルグルと回る。氷の球の周囲はひんやりとしていた。

「あるじゃないか」
「あ、その氷の球には決して触れないでください。触れたら爆発して周囲を凍り付かせます」
「あ、危なすぎるだろ! 今すぐ消せ!」
「え、えー、ほかにないですよ、だってー」
「誰かに当たって爆発したらどうするんだ」
「うー……」

 渋々ルリは魔法を解除し氷の球を消した。
 何とも危なっかしいことをする奴だ。

「こんな暑さじゃ、メクさんをもふもふできません」
「暑かろうが寒かろうがもふもふはもうさせん!」

 メクは拒んでいるが、実はルスター王国に着くまで、何度かもふもふされている。隙があったらメクをもふもふしようとしているので、メクとしては気の抜けない生活になっているようだ。

 港に到着した。
 割と多くの船が泊まっている。
 魚人たちも多く泳ぐのが面倒な者も結構いるのだろう。
 よく考えたら、俺たち人間だって歩けるからと言って、皆歩いて移動しているわけではなく、車に乗ったり自転車に乗ったり、この世界では馬車に乗ったりしているから、魚人が船に乗るのもそこまで不自然な話ではないか。

 近くにいた船乗りの魚人に、モーエン島に行くには、どの船に乗ればいいかを尋ねてみた。

「モーエン島か。ちょうどあと二時間後に俺が乗っている船がモーエン島に行くんだが、それに乗るかい? 乗船賃は当然必要だが、用意できてるか?」
「いくら?」
「モーエン島までなら一人、百ゴールドだな」
「それなら出せる。乗ろう」

 あっさり乗る船が決まった。

 それから二時間後、俺たちは四百ゴールドを払い、乗船した。メクをぬいぐるみに誤魔化せば、百ゴールド安く乗れると思ったが、金は持っているのでケチるのはやめにした。

 舟がモーエン島に向かって、出港した。

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