10.勇者たち

2020年12月20日

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「ははははは! 最初はどうなるかと思ったけど、異世界さいこーだな!」

 アーバス王国の王宮。
 長髪の勇者、不良たちのリーダー格であった山下海斗やましたかいとの笑い声が響いた。

「だなー! いいもの食い放題、女は抱き放題!」

 金髪の大柄の勇者、酒井礼二さかいれいじが上機嫌そうにそう言った。

「最初はダンジョンに行かされた時はどうなることかと思ったけど、敵雑魚過ぎて余裕過ぎるし、それだけで、こんな贅沢できるとか。こんな良いところだとは思わなかったな!」
「もう帰りたくないくらいだなー」

 坊主頭の勇者、大島弘おおしまひろしと、小柄な勇者、武井駿たけいしゅんも上機嫌そうに言っている。

 勇者としてこの世界に召喚された4人の不良たちは、至れり尽くせりな扱いを受けていた。

 1日に数時間、ダンジョンに行き、戦闘訓練を行う必要があるのだが、それさえやっておけばあとは、女を抱くなり良いものを食べるなり、ご褒美として望んだものをくれるのだ。

 ダンジョンでの戦闘訓練は一言で言えば楽勝。
 まともにダメージを与えてくる魔物すらいない。
 こんなんで訓練になるのか、彼らも疑問に思っていたが、勇者は普通のものよりもレベルが格段に上がりやすいうえ、大したことのない相手でもレベルが上がる。スキルの使い方や、基本的な戦いかたは相手が弱くても身につけることができた。

 ちなみに現在の彼らのレベルは、海斗が99/125、礼二が78/99、弘が75/95、駿が72/93となっていた。

 ダンジョン攻略であげたレベルだけでなく、飲めばレベルが上がるポーションを勇者たちのために作ってあり、それを飲むことでレベルがさらに上がっている。

「でも、俺は女にはちょっと不満があるな」

 海斗がそう言った。

「なんでだ。可愛いやつばっかじゃねーか」
「そうだけどよ。みんな外人だぜ外人。日本人とやりてーよ」
「あー、それはある」
「そういえば俺たちと一緒に来ていた女可愛かったよな。あいつ探させて連れて来させるか?」
「いーねー、あれはいい女だったなぁ。あと多分処女だ。最初に犯すのは俺だかんな」

 下卑た表情で勇者たちは語り合っている。
 彼らの頭の中に、哲也のことなど完全に消え去っていた。

 どうでもいいおっさんが死のうがどうなろうが、彼らはどうでもいい以外の感想は持てなかった。

「勇者の皆様いいでしょうか?」

 ミームがいつの間にかやってきて、勇者たちに声をかけた。

「なんだぁ?」
「王様から話がございます。付いてきてください」

 勇者たちは怪訝な表情を浮かべて、見つめ合う。
 ここは従って付いていくことにした。

 案内されたのは、最初に召喚された場所。
 玉座に王様が座っており、周りには王の家来たちがいる。

「おお! よく来た勇者たちよ!」
「話っつうのはなんだ」

 海斗がぶっきらぼうに言った。

 無礼な態度に若干周りの家来たちは、イラついたような表情を浮かべるが、何も言わない。
 勇者に意見できる人物はいなかった。

「お主たちのレベルは、皆すでに70を超えたという。70といえば一人でドラゴンをも倒せるほどのレベルじゃ! カイトに至っては90あるという。レベル90のものなど今まで聞いたことない! どれほど強いのか想像すらできぬわ!」
「なげーよ何が言いたいんだ」

 少し長い話に勇者たちはイラついているようだ。
 王様は一度、コホンと咳払いをして、

「では、本題に入ろう。勇者たちは実戦に投入しても、十分なレベルになったと判断し、今度からお主たちには戦場で戦ってもらう!」
「なに?」
「マジかーついに戦争せにゃならんのか」

 ついに戦場で戦いことになるのかと、少し不安になる勇者たち。

「大丈夫じゃ! 敵の強さはダンジョンにいた魔物とたいして変わらぬ! さらに領地をとり返した際は、その領地と城をそなたたちに授けよう!」
「領地と城……」
「城もらえんの?」

 領地をもらえるいうことには、あまりピンと来ていないみたいだが、城が貰えるということには、少し反応する。

「城貰えるって結構やばくね? 俺たち超偉くなるんじゃね?」
「だよなー、敵も弱いっていうし、よっしゃ! やってやるか!」

 勇者たちは、だいぶやる気を出したようだ。

「やる気を出されたことは、私どもとしても大変嬉しいです。では、細かい説明を今から行います」

 勇者たちは細かい説明を受けた後、戦場に向かう。

 今後彼らは戦場にて、恐れられる存在になっていく。

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