9話 キング・ライドス戦

2020年12月8日

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「止まれ」

 キング・ライドスのまえに姿を現して、ベラムスはそういった。

 キング・ライドスはただでさえ大きなオークより、頭三つくらい大きい。
 通常のオークは金棒を装備しているが、キング・ライドスは背中に大剣を背負っている。

「ア? 止まレ?」

 小さなベラムスが見えていないようだ。キング・ライドスはどこから声が聞こえてきたのか探す。そして、下を向き、

「ア? なんだこの小さいのハ。さっきの声はこいつが出したのカ」

 ベラムスを発見する。

「ニンゲンではないですカ?」

 後ろにいるオークのひとりがベラムスを見てそう言った。
 キング・ライドスの後ろには沢山のオークたちが付いてきていた。

「ニンゲン? ニンゲンは確かにちっこいが、ここまでちっこかったのカ。マアどうでもいイ。おい、そこのニンゲン。今はテメーにかまっている暇はネェ。踏み潰されたくなければさっさとどケ」

 キング・ライドスは、ベラムスのことを心底なめきっているようだった。
 あまりにも体格差があるため、当然ではある。

「お前たちはゴブリンの村に行くつもりだな?」
「アァ? ナゼ知っていやがるテメェ」
「やめておけと警告する。いま戻れば、痛い目に遭わずにすむだろう」

 ベラムスはそういった
 彼はなんの話も警告もせず、いきなり戦いを仕掛けるのは野蛮だと思っていた。
 そのため聞く耳があるとも思えないが、一応警告しておいた。

「ハハハ、痛い目? テメェみてぇなチビガ? ナニをするってんだ?」

 最初キング・ライドスは、笑っていたのだが、

「オレサマハ、なめられるのガ、いちばん嫌いなんだよチビ。ぶっ殺してやル」

 突如、表情を変えて凄みをきかせた。

 ベラムスは表情を全く変えず、

「戻らないということでいいか。なら仕方ないな」

 そう言った。

 キング・ライドスは背負っていた大剣に手をかける。
 剣と言うより鉄の塊といったほうが、正しく思えるような剣だ。
 斬るのではなく、叩き潰すための剣だろう。
 剣を一気に振り下ろして、ベラムスを叩き潰そうとする……が。

 その剣が振り下ろされることはなかった。

「ライトアロー」

 ベラムスがそういった瞬間、閃光が走った。
 "ライトアロー"、光の矢を放ち相手を攻撃する魔法だ。
 ものすごい速度で矢が、キング・ライドスまで、一直線に飛んでいく。
 キング・ライドスはピクリとも反応できない。あっさりと心臓の位置に矢が命中。キング・ライドスの胸に風穴が開いた。

 あまりに一瞬のできごとで、攻撃を受けた本人も、周りのオークも「エ?」としかいえない。

 その後、おびただしい量の血が、キング・ライドスの胸から噴き出す。

 そして、後ろに倒れた。
 血が地面に広がる。

 自分がなぜ死んだのか理解できぬまま、キング・ライドスは絶命した。


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