23話 一年後

2020年11月7日

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 それから一年ほど時が経った。

 ゴブリン村はそのあいだ、だいぶ発展した。

 変わった点はいくつかある。

 まず道が舗装されて石になっている。
 農地が広がっている。メルーン以外の作物が育てられている。

 ゴブリンの数も増えている。外で困っているゴブリンたちを見つけてきて、この村に迎えていたりしていたら、結構数が増えた。現在の総ゴブリン数は百体くらいになっている。
 ちなみに新しいゴブリンたちは、全部ホブゴブリンに進化させている。

 ゴブリンたちの服もきちんとしたものに変わった。
 ベラムスはもう一度町に行って、服を大量に買い込んできていた。
 ゴブリン皆がきちんとした服を着れるようになっている。

 オークたちの服は人間からでは買い取れないのでそのままだ。
 あとで作ってやろうと、ベラムスは思っていた。

 それとオークたちは進化してハイオークになっていた。
 進化して一回り大きくなり、強さも増した。

 その他、新しく住居が建っていたり、訓練をするための施設を作ったり、文字を教えたり、いろいろ便利なものを作ったり買ってきたりとしていた。

 その中でも、光集石を使ったランプを作ったことで、夜でも明るく過ごせるようになった。

 町で変わったことはそのくらいだ。

 ◯

「さて、行くか」

 ベラムスは朝食を食べたあと、出かけようとしていた。
 一年経ってベラムスの背はそれなりに伸びたが、まだ小さかった。

「アタシもいク!」

 デラロサが元気よく言った。

 デラロサは、ホブゴブリンからさらに進化し、マジックゴブリンになっていた。
 マジックゴブリンになると、魔力量が大幅に上がる。そのため使える魔法の種類も増えていた。
外見の変化は、角が大きくなり、さらに角の色が、肌の色である赤褐色から、青色に変化した。

 ゴブリンたちは皆、訓練をつんで強くなっていたが、いちばん強くなっていたのは、デラロサだった。

 ベラムスとデラロサは家を出る。

 向かう場所は訓練所だ。
 弓の練習や、剣の練習をするための施設である。
 的や、カカシなどが置いてある。

 ベラムスは近接戦闘や弓術は専門外であるが、それでもある程度知識はあるため、教えていた。

「オ、ベラムス来たカ。デラロサもいるのカ」

 訓練所に行くと、若い男のホブゴブリンが声をかけてくる。
 彼はウゴー。十五歳くらいであるが、村のゴブリンのなかではいちばん剣の腕が高い。

「ベ、ベラムスくン、デラロサちゃン。オ、おはよウ」

 ウゴーの横でどもりながら挨拶する、ホブゴブリンの少女がメデーロ。
 控えめな性格だが、デラロサの次に魔法の実力はある。
 彼女は魔法天性だろうと、ベラムスは予想していた。

「メデーロダ! きょうも一緒に魔法で遊ボ!」
「ア……」

 デラロサが、メデーロの手を強引に引っ張って行く。
 メデーロの魔法が上手くなっている理由は、天性が魔法だからという理由だけじゃなく、デラロサに付き合わされているという理由もあった。

「毎回すまんな」
「メデーロもデラロサと遊ぶのは楽しいみたいだシ、謝る必要はねーヨ」
「そうか。ほかの連中はまだ来てないのか?」
「そうだなぁ。最近訓練は多いワ、コボルドとかの魔物が結構やってくるワデ、疲れてるっぽかったからなぁ」
「そうだったのか。じゃあ今日の訓練は中止にするか」

 最近ゴブリンの村周辺に魔物がよくくる。

 理由は現在調査中。
 割とバカにならない量の魔物がやってくることもあるので、訓練を少し多めにしていた。

「中止にする必要はないみたいだゼ。来たみたいダ」

 ゴブリンたちが訓練所にやってきた。

「来たか。じゃあ予定通りやろう」

 訓練を行う。
 やることはだいたい模擬戦や的当てなどである。

 一通り訓練が終わると、

「魔物ダ! 南門から来やがっタ!」

 またかとその場にいた全員が思った。

 急いで南門に向かう。

 今回来た魔物は、ジャイアントキラービーというハチの魔物だ。
 言葉が通じる相手ではないので、さっさと倒す。

 今回は数が少なかったので、ベラムスひとりで倒すことができた。

 ただ、数があまりにも多すぎると現在のベラムスの魔力では対応しきれない。

 保有魔力量は少ないうちは増えるのが早いが、ある程度多くなると、増えるスピードも遅くなっていく。
 現在のベラムスの魔力は、一年まえと比べて、劇的に上がっているわけではなかった。

「ナァ、ベラムス。なんで最近はこんなに魔物がやってくるんダ?」
「分からん。今、調べているところだ」

 ベラムスは村の近くの森を調査していた。
 ただ、原因は見つからない。
 まだ、遠くまでは調べてはいないので、遠くの方でなにかが起こっているかもしれない。

 長時間、村を離れたくないと思っていたため、遠くまで行くのはやめて置いたが、こうも魔物の襲撃があるなら、行った方がいいかもしれない。
 なにか良くないことの前触れじゃないならいいが……ベラムスはそう願った。

※あとがき

捨てられた転生賢者はWEB版と書籍版が途中から違いまして、ちょうど23話から先は、別展開となっております。書籍版の方を無料公開は出版者様との関係上難しいため、これから先は書籍版でお読みください。

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