第三十七話 vsロウグ&モウグ①

2020年12月26日

     <<前へ 目次 次へ>>

「べリアス……こいつら何なの!?」
「わ、わかんねーよ。こんな奴らダンジョンにはいなかった! めっちゃやべー奴らだってことは見た瞬間分かったけど」
「ど、どうする!?」
「た、戦うしかねーだろ。どう考えても向こうはオイラたちを殺す気満々だぜ」
「か、勝てるかな?」
「SSランクの三体の力を信じるしかねーんじゃねーのか」

 うろたえているリックたちとは違い、クルス、ギル、シロエは落ち着いているようだ。
 その様子を見て、動揺していたリックは少し冷静さを取り戻す。

(そ、そうだ。クルスたちならきっと勝てるはず……冷静にならないと……二体いるから、とりあえず戦力を分けないと)

 リックはそう考え、

「シロエとギルがモウグを、クルスとほかの者たちでロウグを倒そう」

 そう振り分けた。

「青いのがモウグで、赤いのがロウグじゃったか?」
「逆だよ逆」
「じゃあ、わしの相手は青い奴か。父上たちは静観してよいぞ。わしだけで倒してやろう」

 そう言って、クルスは一人でロウグの前に立った。

 そしていつもの機動力を見せつけて、ロウグの腹に蹴りを入れる。

「ぬ!」
「効かん」

 ロウグは全く動じない。
 今まで幾多の敵を一撃で葬り去ってきたクルスの攻撃を、防御態勢をとる事無く、全くのノーダメージで防ぎ切った。

「何と」

 驚いているクルスにロウグの攻撃が来る。
 かなりのスピードであるが、クルスにとっては簡単に避けられる速度であっさりと回避。

 それから敵は連続して攻撃するが、クルスはそのすべてを回避してみせた。

 回避しながら何度か攻撃をするが、ロウグには一切通用している感じがしない。

「すばしっこい奴だ」
「むう。硬いのう。わしの攻撃が全く通用せんとは」

 両者ノーダメージ。

 リックはその様子を見て、

(これ決着つくんだろうか)

 と思った。

「ふん、すばしっこいがいつまで体力が持つかな?」
「お主が疲れて動けなくなるまでは持つわい」
「このロウグ様に体力勝負をしようというか。笑止」

 ロウグはそう言って攻撃を再開した。

 何とも気の長い戦いになりそうだとリックは思う。

(てかロウグの眼中に僕たち入ってないよね)

 完全にクルスとの戦いにロウグは集中していた。

(でも、僕たちに出来ることと言ってもあまりないし、足を引っ張らないようにするのが精いっぱいというか……でも、一対一で勝てるのかなクルスは……やはり何とかして援護をしないと)

 リックはどうにかして自分たちが援護をして、クルスが勝つ確率を上げたいと思い考える。

(……でも本当にクルスの攻撃が通用していないな。凄い防御力だ……弱点とかないものだろうか……弱点……そうか……弱点か……)

 リックは何かを観察したりするのが人より得意であった。
 戦いを観察し、ロウグの弱点をまず探してみようとリックは思った。

「どうするよ大将」
「とにかく奴を観察して弱点がないか探してみるよ」
「弱点? あんなバケモンにあんのかねそんなもんが」
「分からないけど、比較的ほかのところより防御が弱い場所はどこかにあってもおかしくはないと思うよ。幸いクルスの攻撃はロウグには当たっている。弱点付近を攻撃したら、反応が変わったりするかもしれない」
「……まあ、それはあるかもな。多分オイラたちじゃ弱点を突いてもダメージは与えられなさそうだが、クルスの姉さんならわかんねーな。よし、オイラもそういうのは得意だから一緒に弱点探ししてやるよ」

 リックとべリアスは一緒にロウグに弱点がないかを探し始めた。

「めんどいっすけど……ま、やるっすかね」

 シロエは少しやる気のなさそうな声で呟きながら、モウグと向かい合い、それから早速エンシェントドラゴンの姿になった。

「ほう? 只者ではないとは思っておったが、エンシェントドラゴンとは、これは楽しめそうだな」

 モウグはシロエがドラゴンになった姿を見て、そう言う。
 エンシェントドラゴンは、SSランクの中でも強力な魔物として認知されていた。

 この部屋は天井が高く、シロエは一度飛び上がる。

 そして、上空からエネルギー弾を数発放った。

「効かぬわ!」

 そのすべての攻撃を自身の体で受け止めて、モウグは防ぎきる。

 全くのノーダメージ。

「ちっ、めんどうっすね。これなら効くっしょ」

 高威力のエネルギー弾を討つと、体に負担がかかるので、多少威力を抑えて撃っていたシロエ。

 今度は七割くらいの威力で放つ。

「む!」

 それは流石に受けきるのは難しいと判断するが、避けるということは彼のプライドが許さなかった。

 手に魔力を込めて、それでエネルギー弾に触り、それを横に受け流す。

 完全に防御したように見えたが、凄まじい威力で手にダメージを負った。
 とはいえ軽傷なので、手が使い物にならなくなったわけではなさそうだ。

「むう……今度はわしの番だ」

 同じく魔力を手に集め、それを純粋なエネルギーへと変換させ、シロエに放つ。原理的にはシロエの放つエネルギー弾とほぼ同じものが、発せられる。

 シロエは華麗に飛んで回って避けるが、何発も撃たれる。
 ここが空ならいいが、ダンジョンの空という事で飛びにくく、若干当たりそうになってしまう。

「く、ここが空なら……」

 当たると流石に結構痛そうであるとシロエは思っているので、避け続ける。

 二体の攻防をじーっと見ていたギルが、ここで動き出す。

 とりあえず小手調べに、体当たりをモウグの手にかました。

「む!」

 ダメージはほぼないが、手を攻撃されたおかげで狙いがくるってしまう。

「邪魔をするな!!」

 モウグはギルを殴りつける。

 凄まじい勢いでギルは飛んでいき、壁に直撃。

 とんでもないダメージを食らったが死なない。

 二千ほど体力が削れたが、その影響で十体分身が作成される。

「よし、狙い通り」

 ギルは分身に備わっているもう一つの能力を使う。

 十体の分身を全て合体させて、巨大なスライムを一体作りだした。
 ちなみに本体はその合体に混ざることは出来ないので、巨大な分身一体と、本体一体という感じになる。

「攻撃形態(アタック・フォルム)」

 ギルがそう呟くと、巨大な分身スライムが姿を変え始めて、虎のような姿になった。

 丸のままだと攻撃パターンが狭いので、姿を変更させることが出来るのだ。

 ギルは巨大分身スライムにモウグを攻撃させる。

「ぬ、何だこれは! どこから出てきた」

 先ほどまでいなかった謎の強力な魔物の登場に、モウグは少し驚く。
 ギルが出した者であるとは、気付いていなかった。

 攻撃形態の巨大スライムは流石に強力なので、ダメージを与えることが出来る。

 空からシロエの攻撃、陸からの巨大スライムの攻撃で、モウグは翻弄される。

 しかし、致命的なダメージを与えるのは難しく、モウグを翻弄は出来ているが、倒せるのかどうか怪しかった。
 このままではこちらの方が先に消耗してしまうと、シロエとギルの心に焦りが生まれ始める。

 モウグはシロエへの攻撃を一旦諦めて、まず巨大スライムを叩き潰すことに決めた。

 巨大スライムは動きはシロエほど早くはないため、きちんと冷静に対応すれば攻撃は当たる。

 モウグに顔を殴られた巨大スライム。
 分身が受けたダメージは、ギル本体が受けたダメージにもなる。
 巨大スライムになったおかげで、防御力が上がったため、一撃で千ほどのダメージが出る。
 そして、五体の分身が発生した。

 五体では合体は出来ないが、モウグの戦闘の邪魔をすることは可能なので、徹底的に邪魔役に徹して、シロエや巨大スライムが攻撃を当てるのをサポートする。

 ここでやっとスライムが出したのがこの巨大スライムであると気付いたモウグは、狙いを巨大スライムではなく、ギルやまだ合体していないスライムに変更する。
 何となくこのデカいのを攻撃しなくても、倒せそうだと分かったようだ。

 このまま連続して殴られ続けると、敵の攻撃力を考えるとあっさり死んでしまう可能性がある。ギルは危機感を覚えた。

 シロエはギルの危機を感じ取り、一気にモウグに向かって急下降して、至近距離でエネルギー弾をモウグの頭に向かって打ち込む。

 流石に頭に当たると、クラッとするモウグだが、致命傷には至らない。

 だがだいぶ痛みを感じたようで、かなり頭に来ているようだ。

「お前らどちらとも八つ裂きにしてやる」

 モウグは怒りの表情でそう叫んだ。

スポンサーリンク


     <<前へ 目次 次へ>>

Posted by 未来人A