第十四話 来訪

2020年12月20日

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 飛王が訪れる当日。

 マナは自室で待機していた。

 最初にジェードランが出迎えて、飛王を自室に案内する手筈になっている。

「飛王ってどんな奴なんだろう……」

 ゴリゴリのマッチョで強そうな翼族の男を、マナは想像した。

「何で人間を嫌っているのかな……前世の時代ならまだしも、今は人間と魔族は和解してるんだよね」

 昔の価値観を引きずっているのか、何か人間にされたのか。

 どの道、それは本人に聞いてみなければ分からないことである。
 仮に聞いても、教えてくれない可能性は高いだろうが。

「飛王様が来られた!!」

 城の外から大声でそう合図が聞こえてきた。

(もうすぐか)

 マナは緊張感を高めながら、飛王が自室に来るのを座って待った。

 ジェードランは、カフカを後ろに引き連れ、飛王の到達を待った。

「あれは……」

 ジェードランは空を見た。

 何かがバルスト城に向かって飛んできている。

「飛王だ……」

 飛王は空からやってきた。

 翼族は、翼が六枚以上になると飛行することが可能になる。
 しかし、六枚の翼では、飛行速度は遅く、さらに距離もそれほど長く飛ぶことが出来ない。

 四対八枚の翼を持つ飛王は、高速飛行、遠距離飛行、どちらも可能であった。

 飛王がゆっくり地上に降り立った。

 腰の辺りまである黒い髪を持つ、女の翼族だ。
 顔は整っている。大人な顔立ちで、これ以上ないほどの美人である。
 しかし、目つきが鋭く、感情がこもっていないので、初対面では美人というより、怖そうなという印象が強く残るかもしれない。
 背中からは四対八枚の純白の翼が、芸術品のように生えていた。
 背は170は超えており、女にしては大きく、スタイルも抜群である。

「一人ですか?」

 ジェードランは飛王に質問した。

 周りには誰もおらず、飛王は完全に一人である。

「姫に会うために、部下と一緒にいる必要はあるまい」
「しかし、危険があるかもしれませんよ?」

 ここで飛王を殺せば、バルスト城の立場は危うくなるかもしれないが、全ての翼族に支持を得ているわけではないので、殺しても案外見たかする者も多いかもしれない。

 飛王が一人であるならば、複数で全力でかかれば倒せるのではないかと、ジェードランは考えた。

「危険? そんなものがどこにある?」
「案外近くにあるかもしれない」
「ほう?」

 その瞬間、飛王はすさまじい威圧感を放った。

 あまりの圧にジェードランは気圧される。

 そして悟った。

 飛王には束になってかかろうと、勝てない。それだけ大きな実力差がある。

「もう一度聞くが、危険など、どこにあるのだ?」
「……俺の勘違いでした」

 冷や汗をかきながら、ジェードランはそう言うしかなかった。

(クソ……やはりこいつは別格の存在だ……こいつがマナに危害を加えるつもりならば、止めることも出来ないかもしれない)

 強引にでも逃がしておくべきだったと、ジェードランはこの時、大いに後悔した。

 もはや今から逃がしても、幼女であるマナが、この飛王から逃げることは出来ないだろう。

 ここは覚悟を決めて、飛王に従うしかないとジェードランは思った。

「姫はどこにいる」
「案内します」

 ジェードランは飛王をマナのいる部屋まで案内した。

(来たね)

 マナは外から足音が聞こえてきたので、飛王が来たことを察知していた。
 足音だけでなく会話も聞こえてきた。

「ここがマナフォース姫のいる部屋です」
「姫は地下牢にいると思っていたが、意外だな」
「地下ではストレスがたまり健康を害すると思ったので」
「そうか。姫とは私だけで会う。貴様らは入ってくるな」
「…………はい」

 室内で飛王と思われる者の声を聞いたマナは、女なんだと、自分の想像とは違う事を知り意外に思った。

 扉が開いて、飛王が中に入ってきた。

(うわぁ、驚くほど美人だけど、なんか目が怖いな……ってか翼多ッ! 八つってめちゃくちゃ多いんじゃないの??)

 翼族の知識はあまりないマナであるが、ジェードランより多いので相当凄いのではないかと予想はついた。

 飛王はマナの顔を見つめている。
 目を見開いて、信じられない物を見るかの表情である。何か衝撃を受けているようだ。

「…………ている」

 何かを飛王が呟いたが、マナの耳には届かなかった。

「…………はずはない。……わけがない」

 小声で何かを呟きながら、彼女は首を横にブルブルと振った。そのおかしな様子に、マナは首をかしげる。

(あ、そうだ。魅了のため情報を見ないと)

 いきなりの奇行に戸惑ったが、飛王を魅了するという目的を果たすために、情報を見る。

「え!?」

 思わずマナは声を漏らした。

『???』

 いつもの表示は出ず、その文字だけが浮かび上がったからである。

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