第三十二話 Bランクになる

2020年12月26日

     <<前へ 目次 次へ>>

 それからさらに数ヶ月が経過。

 リックは稼いだDPでとにかく魔物を合成しまくった。

 すでにSランクの魔物を、五十体以上は作成していた。

 Sランクの魔物は増えたがSSランクの魔物は出なかった。

 今回は運が悪かったのか、もしくは逆に今までの運が良すぎたのか、リックには分からなかったが、とにかくSSランクの魔物は出ていない。

 魔物を作る以外にも、リックは階数を広げた。

 4000DPで五階を作成し、16000DPで拡張する。

 そして、フィールドチェンジも行う。

 五階は最初、岩地というあまり使えないフィールドになったので、二度目のフィールドチェンジを行った。

 五回外れを引いた後、六回目で攻撃力アップのフィールドを引く。

 効果は単純で、この階に配置した魔物の攻撃力を上げる。敵には効果はない。
 シンプルながら攻撃力を上げるというのは、中々強力な効果である。

 そしてさらに数ヶ月後、

「ぱんぱかぱ〜ん! ダンジョンランクがBに上がったのです! これで赤叡山のダンジョンに攻めに行くことができますよー!」
「やったー」

 ダンジョンランクがBに上がる。

 これで魔物を外に出せる時間が長くなり、赤叡山に攻めに行くことが可能になった。

「えーと、Bランクに上がったので、新しく出来るようになることを説明するのです。ただ、Bランクは、そんなに新しく出来ることが多くないのです」

 ユーリは、Bランクに上がったことで出来るようになったことを説明した。

 ・監視玉を増やせる。
 一個しかない監視玉を三個までに増やせる。一個増やすのに50000DP必要

 ・魔物の卵Bを作成可能になる
 消費DPは一個3000DP。

 ・スキル付与を使うことができるようになる
 魔物にスキルをランダムでつけることができる。
 一度に持てるスキルは二個まで、基本的に初期状態でスキルは持っていない。一回15000DP

「監視玉増やすのと、スキル付与ってかなり高いね……」
「監視玉は一つ増えれば、利便性が増しますし、スキル付与も、強いスキルがついたら、微妙な魔物でも物凄く強くなるのですからね。当然といえば当然なのです」
「そうかぁ。今DPいくつある?」
「現在のDPは55万なのです」

 リックたちは魔物たちを外に出すことに備えて、DPを貯めていた。

 一ヶ月間、魔物を外に出すためには一体につき3万DPかかるらしい。

 55万DPだと出せる数は、十八体と多くはない。

「もう少し貯めたほうがいいかなー」
「うーん、この前のシロエちゃんとクルスちゃんの無双ぶりを考えると、行けるとは思うのですがね。念のためもう少し貯めるか……もしくはSSランクの魔物をもう一体作成できるまで、魔物合成をしてみるか、どちらかがいいと思うのです」
「そっかー、SSランクがもう一体いれば、負けることはないだろうからねー」

 リックはどっちにしようか悩む。

「よし、じゃあ魔物合成をしようか」

 そう決めた。

 今まで結構な数を作ってきたのに、シロエ以降一体も作れてないので、作れるかどうかはかけであったが、作ってみることにした。

 三回作り、ここまではSランクである。
 そして四体目。

 スライムが合成された。
 大きさは普通のスライムを少し大きくしたくらいだが、何やら金ピカに輝いている。

「な、何こいつ、スライム? ただのスライムではないよね?」
「うーん……金色のスライムですか。初めてみるのですが……」

 リックたちはそのスライムを観察する。

 すると、

「あんまりジロジロ見ないでくれるか。恥ずかしい」

 とスライムが声を発した。
 渋い男の声だった。

「ス、スライムが喋った!?」
「嘘ー!?」

 スライムはどれだけ進化しようが、知能は最底辺である。エンペラースライムですら、まともな思考能力を持ち合わせていない。
 それが喋ったのだから、驚くのも無理はないだろう。

 よく見ればこの金色のスライムには、円らな瞳が二つある。通常のスライムには目などない。

「あなた方は、何なのだ?」
「えーと、君の製造者なんだけど。君は何なんだ?」
「私は……何なのだろうか、よくわからない」

 この辺はクルスの時と同じで、生まれたばかりなので、自分のこともよくわかってないみたいだ。

 今回ばかりはユーリも金色のスライムの正体がわからないので、二万DPを消費して鑑定してみることにした。

「こ、これは……」

 リックは鑑定結果を見て、度肝を抜かれた。

 ゴッドスライム0歳 ランクSS 性別無
 HP  12000/12000
 MP  10000/10000
 攻撃  888
 防御 666
 速度 1111
 スキル 分身作成 

「SSランクの……スライム!? しかもこのステータス、とんでもない数字だ」
「は、初めて見たのです……こ、こんな魔物がいましたか……SSランクの魔物は珍しいので、知らないのがいてもおかしくはないのですが……」

 リックとユーリは、そのゴッドスライムを見て衝撃を受けた。

「あなた達は一体何なのでしょうか? ここは何処なのでしょうか?」

 ゴッドスライムは、キョロキョロと周囲を不安そうに見回す。
 円らな瞳と丸いビジュアルは、非常に可愛らしいが、とても強そうには思えない。これが本当にSSランクなのかと、リックは疑問に思う。鑑定が間違っている可能性は低いだろうけど、ゼロではないかもしれない。

「えーと、君は今さっき僕に合成で作られたんだけど……」
「私を作った? ……確かにあなたを見てるとそんな気がしてきました。言葉で言い表すのは難しいですが、何か信仰心のようなものを無条件で、あなたに抱いているようです」

 ゴッドスライムと、ゴッドと名のついているものから、信仰していると言われて、何故だか不思議な気分にリックはなる。

「えーと、僕の名前は、リック・エルロード、こっちの精霊は、ダンジョン精霊のユーリ」
「私の名前は何というのでしょうか?」
「今から決めるから待っててね」
「命名はまだでしたか。ではよろしくお願いしますリック様」

 リックはゴッドスライムの名前を考え始める。

「思いついたのです!」

 数秒でユーリが名前を思いついたようだ。
 過去の例から彼女のネーミングセンスが、ゼロだとは判明している。

「金色で丸い玉みたいなので、金ボールちゃんで、どうでしょうか?」
「色んな意味で駄目だよその名前は!!」
「色んな意味ってどういう意味ですか?」
「とにかく駄目!」

 リックはユーリの命名を断固拒否した。

「ふむ、じゃあこういうのはどうじゃ?」
「あれクルス? 何でここにいるの?」

 今回合成の手伝いにクルスは呼んでいない。

 Sランクの魔物数体に手伝わせていた。

 クルスはどの階にいろとか命令をされているわけではないので、ダンジョンマスタールームに来ることも可能ではある。

「何かとてつもない気配を感じたので、慌てて飛んできたのじゃ。合成で新しい魔物を作成したのじゃな。一見弱そうに見えるが、凄まじい力を秘めておるのがわかるわい」
「うん、そうだけど」
「そやつを見た瞬間、名前が浮かんだのじゃ。『神々しい者』これでどうじゃ?」
「こ、これでどうじゃと言われても……」

 それは名前なのかと、リックは疑問に思う。
 称号とか二つ名とかのような気がしていた。

 しかし、クルスは渾身のドヤ顔を浮かべているため、指摘できず戸惑っていると、

「それは名前ではないでしょう。二つ名とか、称号とかです。却下します」
「な、なぬ! わしの名を却下すると申すか!?」
「ええ、そもそも私はリック様に作られたので、リック様から名前を賜りたく存じます」
「ぬう、まあ、父上が名前を決めるというのは、筋ではあるな」
「分かった僕が考えるよ」

 リックは頭をフル回転させて、名前を考える。
 ユーリほどではないが、自分もネーミングセンスはない方であると、リックは思っていた。
 それでも何とか、いい名前をつけようと頭をひねる。

 そして、

「じゃあ、君はギルだ」
「ギル……ですか」
「ギルドラスっていう神様の名前から取ったんだ。金が好きな神様で有名なんだ」
「なるほど、分かりました。良い名前を頂き誠に感激しております」

 ゴッドスライムの名前は、ギルで決定した。

スポンサーリンク


     <<前へ 目次 次へ>>

Posted by 未来人A