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第二話 魅了

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「……良い方法が……思い浮かばない!」

 記憶を取り戻してから、二日後の夜。

 ベッドに仰向けで寝転がり、脱出のアイデアを考えていたが、何ひとつが思い浮かばなかった。

 何をするにしても、部屋の外に出れば看守が付いてくるので、逃げることは不可能。

 部屋の中から外に行けそうな抜け道はなし。

 同情作戦も何度か試したが、全く効果なし。

 ほかに効果的な作戦を思いつくことは出来ず、途方に暮れていた。

「……そういえば明日は五歳の誕生日のようね……五歳といえば、スキルが開花するのは五歳だったような気がする」

 スキルは人間だけが扱う事の出来る、特殊能力のことだ。

 五歳になったら、天啓を受けたかの如く、使い方やスキルの効果が頭の中に思い浮かんでくる。

 一人一人使えるスキルは異なる。

 問題はスキルは基本的に役に立たないということだ。

 声が少しだけ大きくなるとか。
 髪の毛が伸びやすくなるとか。

 マナが今まで見みた中で、一番便利だと思ったスキルが、一日にコップ三杯分の飲み水を出せるだ。

 水を汲みに行く必要が少なくなるので、便利なのは確かなのだが、戦いの役に立ったりするわけではない。

 ほとんどの人は役に立たないスキルが開花するので、スキルの効果が何だったのか、時間の経過とともに忘れる人も多い。

 マナは覚えていない者の一人だった。

「でも……見たことはないけど、透明になるスキルとか、逃げ足が速くなるスキルとか、そういう戦いにも使えそうなスキルもあるって話は聞いたことある。本当かどうかは分からないけど……」

 もし透明なれるスキルが開花したら、逃げることも可能かもしれない。

(今のアタシはお姫様っていう特殊な生まれだし……もしかしたら凄いスキルが開花してそれで脱出できるかも)

 何の根拠もない話ではあるが、マナは前向きに考えた。
 確率は間違いなく低いが、脱出できる方法が全く思い浮かばない以上、どんな小さな可能性にも縋りたかった。

 スキルは五歳の誕生日に開花する。
 タイミングは人それぞれだが、朝目覚めた瞬間に開花するケースが一番多い。

「よし、寝よう」

 もう夜で眠くなってきたので、マナはドキドキした気持ちで眠りについた。

「うわっ!」

 翌日の目覚めはあまり良くなかった。
 悪夢を見ていたからだ。
 三十人くらいの看守に追い回される夢だ。
 転生してまだ数日であるが、記憶を思い出す前は看守が相当なトラウマになっていたので、悪夢を見てしまったのだろう。

 マナは、顔から吹き出ている汗と目から流れ落ち涙をふくの裾で拭い、深呼吸して呼吸を整える。

 すぐにリラックスする。

 転生前は戦で何度も怖い目にはあってきた。
 心の乱れをすぐに治める技術は、自然と身に着けていたものだった。

 心を落ち着けたのとほぼ同時、自分にスキルが開花したことを本能的に知った。

 徐々に自分がどんなスキルを使えるようになったのかを理解してくる。
 頭の奥底から誰にも教わったこともない不思議な知識が湧いて出てくるような、不思議な感覚だった。

・相手の好感度や好きなタイプ、好きな物などの情報を目で視認することが出来る。

・他人に好かれるような行動をとった時、通常ではありえないほど好感度が上昇する。

・好感度は本来ならば特殊条件を満たさない限り100以上に上がることはないが、スキルを保有しているものは特殊な要件を満たさなくても200まで上げることが出来る。

・好感度は、-200怨念がある、-150復讐心を抱いている、-100大嫌い、-50嫌い、-10気に入らない、0無関心、10興味がある、50好き、100大好き、150忠誠心を抱いている 200絶対服従

 開花スキルの効果を冷静にまとめてみた。
 そして、

「これって多分……いや、絶対使えるスキルじゃない!」

 喜びながら叫んだ。

 このスキルで相手の好感度を上げていけば、自分に忠誠を誓わせ命令を利かせられるようになる。

 そうなると脱出も可能になるだろう。

 心の奥底で無理かもしれないとマナは思っていた。

 それだけにこのスキルの発現は嬉しい誤算となった。

「お姫様の血がこのスキルを発現させたのかな? それともただ運が良かっただけ? まあ、どっちでもいいか。このスキルなら看守の好感度を上げて……」

 忠誠を誓わせることが出来るとは、断言できなかった。
 それほど看守が堅物で任務を確実に遂行する女であったからだ。

「た、試してみないと分からないよ! 早速使ってみよう! あ、そうだ。一応スキルに名前を付けておかないとね」

 スキルの名前は自分もしくは親が付ける。

 使えない場合は付けない場合が多いが、今回は使えるので付けた。

「よし、決めた! アタシのスキルは『魅了』だ!」

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